2011 Fiscal Year Annual Research Report
ERK-MAPキナーゼ経路の選択的遮断を基盤としたがん化学療法の開発
Project/Area Number |
22300340
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
河野 通明 京都大学, 薬学研究科, 研究員 (00027335)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
尾崎 恵一 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 准教授 (50252466)
谷村 進 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (90343342)
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Keywords | 細胞がん化 / がん化学療法 / ERK-MAPキナーゼ経路 / MEK阻害剤 / 微小管重合阻害剤 / HDAC阻害剤 / 併用療法 |
Research Abstract |
1.MEK阻害剤と微小管作用薬の併用による細胞死増強の分子機構に関して、それはMEK阻害剤によるBim (pro-apoptotic Bcl-2 family protein)のUp-regulation/MEK阻害剤と微小管作用薬の相乗的な作用によるMcl-1 (anti-apoptotic Bcl-2 family protein)のDown-regulationを介して、細胞の生存/死シグナルのバランスを大幅に細胞死側に傾ける事が重要である事を明らかにした。さらに、MEK阻害剤と併用する事で顕著な細胞死を誘導できる薬剤として、微小管作用薬だけでなく、M期進行に関与する様々な分子(Polo-like kinase、Kinesin-5等)に対する阻害剤(M期延長を誘導する)が該当する事を見出し、MEK阻害剤を利用した新規がん化学療法の開発に向けて、確かな方向を提示した。 2.MEK阻害剤とHDAC阻害剤の併用による細胞死増強に関しては、様々ながん細胞を移植した動物個体系(Xenograft)においてもその効果を確認した。一方、その分子機構に関しては、Bim及びTBP-2(抗酸化タンパク質Thioredoxinを不活化する)のUp-regulationを介して、活性酸素種(ROS)の顕著な蓄積を誘導する事が重要である事を見出した。 3.ERK-MAPキナーゼによる細胞運動制御の分子機構に関して、その下流で機能する新規分子SH3P2の同定(細胞運動を負に制御し、その機能はRibosomal S6 Kinase (RSK)によるリン酸化により抑制される)、SH3P2が特異的に相互作用する分子としてMyosin1Eの同定、さらにMyosin1Eが相互作用する分子としてCavin複合体を同定した。これらの知見は、ERK-MAPキナーゼがカベオラの形成制御を介して細胞運動を調節している可能性を示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MEK阻害剤と微小管重合阻害剤の併用による抗腫瘍効果の増強を動物個体形で確認し、さらにこれら薬剤併用による細胞死誘導増強の分子機構を解明した。MEK阻害剤とHCAC阻害剤の併用による抗腫瘍効果の増強を動物個体形で確認した。また、細胞運動制御におけるERK-MAPキナーゼの役割に関しても、その下流で機能する新規分子SH3P2/Myosin1E複合体の同定、その機能解明の解明を進めるなど、当初の研究計画を順調に達成しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、MEK阻害剤と微小管作用薬/HDAC阻害剤の併用による細胞死増強の分子機構をより詳細に解明する事で、新たな分子標的の同定を検討する。また、ERK-MAPキナーゼによる細胞運動制御の分子機構を、SH3P2/Myosin1E複合体の機能に焦点を当てて解析し、ERK-MAPキナーゼ経路の遮断によるがんの浸潤・転移抑制戦略の基盤整備を進める。
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Research Products
(6 results)