2010 Fiscal Year Annual Research Report
がん細胞に特徴的な増殖環境への適応メカニズムと治療標的化
Project/Area Number |
22300342
|
Research Institution | Japanese Foundation For Cancer Research |
Principal Investigator |
冨田 章弘 財団法人癌研究会, 癌化学療法センターゲノム研究部, 部長 (40251483)
|
Keywords | がん細胞 / 微小環境 / グルコース飢餓 / ストレス応答 / 分子標的治療 |
Research Abstract |
腫瘍組織においては、がん細胞は正常組織とは異なる特徴的な環境で生存し増殖する。この特徴的な増殖環境へのがん細胞の適応メカニズムを解明し、その治療標的化のための基盤研究を行うことにより、これまでにない新しいがん特異的な治療法開発への道を開く。こうした全体構想の中で本研究では、グルコース飢餓がん細胞の標的化を目指し、UPR標的薬剤の作用機序解析、グルコース飢餓におけるUPRの分子機構解析、UPRの制御薬剤探索の研究を行うとともに、それらの成果の応用展開を促進するため、適応メカニズムの治療標的化に向けた高次解析の研究を進めた。本年度は、これまでにUPRを抑制することを見出している、ビグアナイド系化合物のメトホルミン、ブホルミン、フェンホルミンについての作用機序解析を中心に検討した。その結果、グルコース飢餓環境下でこれらの薬剤を処理すると、蛋白合成開始抑制因子4E-BP1の異常活性化が認められること、この4E-BP1の活性化に伴いUPRの活性化が抑制されることが明らかになった。一方で、グルコース飢餓環境での細胞生存におけるミトコンドリアの役割を明らかにするため、ミトコンドリアDNA欠損細胞やミトコンドリア呼吸鎖阻害剤を用い解析を進めた。その結果、グルコース飢餓環境下でミトコンドリアの機能が欠損すると、4E-BP1の異常活性化が起こり、UPRが抑制されることが明らかになった。こうしたグルコース飢餓環境下でミトコンドリアの機能が欠損した際に見られる現象は、上記のビグアナイドなどのUPR抑制化合物を作用した際の現象と非常に良く合致しており、UPR抑制化合物の作用機序の解明に極めて有用な情報であると考えられた。
|
Research Products
(10 results)