2011 Fiscal Year Annual Research Report
がん細胞に特徴的な増殖環境への適応メカニズムと治療標的化
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22300342
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Research Institution | Japanese Foundation For Cancer Research |
Principal Investigator |
冨田 章弘 公益財団法人がん研究会, がん化学療法センター・ゲノム研究部, 部長 (40251483)
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Keywords | がん細胞 / 微小環境 / グルコース飢餓 / ストレス応答 / 分子標的治療 |
Research Abstract |
腫瘍組織においては、がん細胞は正常組織とは異なる特徴的な環境で生存し増殖する。この特徴的な増殖環境へのがん細胞の適応メカニズムを解明し、その治療標的化のための基盤研究を行うことにより、これまでにない新しいがん特異的な治療法開発への道を開く。こうした全体構想の中で本研究では、グルコース飢餓がん細胞の標的化を目指し、UPR標的薬剤の作用機序解析、グルコース飢餓におけるUPRの分子機構解析、UPRの制御薬剤探索の研究を行うとともに、それらの成果の応用展開を促進するため、適応メカニズムの治療標的化に向けた高次解析の研究を進めた。本年度は、昨年度までにUPR抑制のマーカーとして同定してきた翻訳開始抑制因子4E-BP1の活性化を指標に検討し、UPR抑制化合物ブホルミンの腫瘍内投与によって、腫瘍内においても、グルコース飢餓培養細胞と同様に、4E-BP1の活性化が認められることを明らかにした。また、UPR阻害活性を有する化合物として見出していたAMPK阻害剤のcompound Cについて作用機序解析を進めた。その結果、compound Cは、ブホルミンなどと異なり、蛋白合成開始抑制因子4E-BP1の異常活性化を伴わずにUPR阻害活性を示し、従来見出してきたUPR阻害剤とは異なるタイプの化合物であることが明らかになった。さらに、39種類のヒトがん細胞に対する細胞毒性パターンを基盤に、既知のUPR抑制化合物の類似性を評価したところ、versipelostatinやビグアナイドなどが高い類似性を示すことが明らかになった。そして、これら既知のUPR阻害化合物と類似性を示す新たな化合物について、UPR抑制活性の検証実験を進めた。こうした化合物を用いた研究に加え、グルコース飢餓環境下でUPRの起こらない、ミトコンドリアDNA欠損細胞株を用い、in vivoでの造腫瘍性に着目した検討を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、グルコース飢餓がん細胞の標的化を目指し、UPR標的薬剤の探索と作用機序解析を中心に取り組んでいる。平成23年度は、情報解析を活用した化合物探索系で見出した候補化合物のUPR抑制活性の検証実験や、ビグアナイド類やAMPK阻害剤のUPR抑制活性についての検討を行い、ほぼ予定通りの成果を得ることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は3年間の計画で第2年次終了時点であるが、研究はおおむね順調に進んでおり、研究計画の変更あるいは研究を遂行する上での問題はない。平成22年度、平成23年度の成果に基づき、平成24年度の計画にしたがって研究を遂行する。
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Research Products
(8 results)