2011 Fiscal Year Annual Research Report
がん細胞の可塑性を担うエピジェネティクス機構を標的とした新規治療法の開発
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22300344
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Research Institution | Aichi Cancer Center Research Institute |
Principal Investigator |
近藤 豊 愛知県がんセンター(研究所), 分子腫瘍学部, 室長 (00419897)
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Keywords | エピジェネティクス / がん幹細胞 / ポリコーム / グリオブラストーマ |
Research Abstract |
膠芽腫(グリオブラストーマ)は、原発性脳悪性腫瘍の中で最も高頻度に発生する腫瘍である。固形腫瘍が治療感受性や転移能の異なる細胞集団を獲得する背景に、幹細胞様がん細胞(がん幹細胞)の存在とそのエピジェネティクス制御機構が鍵となると考え、ヒト膠芽腫のがん幹細胞(Gliomastem-like cell,GSC)の分化誘導モデルを樹立した。がん幹細胞の分化過程は可逆的であり、H3K27メチル化酵素(EZH2)を含むポリコームタンパク複合体2(PRC2複合体)がこの過程で鍵となる役割を演ずることを見出した。EZH2の阻害は、がん細胞の可塑性を著しく抑制した。PRC2/EZH2を標的とした治療法は、がん細胞の可塑性を減弱させ、これまでにない新たながん治療戦略につながる可能性が期待できると考えた。さらにPRC2/EZH2の標的遺伝子としてmicroRNA(miRNA)の発現制御が、固形腫瘍の腫瘍内不均一性を形成する機序の基盤にあると考え、GSC分化誘導時におけるmiRNA発現の変動を網羅的に解析した。髄鞘形成の際に重要なタンパクであるOligodendrocyte Specific Protein(OSP/CLDN11)の発現制御に関わるmiR-1275を新たに同定するとともに、H3K27me3によるmiR-1275の転写制御機構を明らかにした。グリオブラストーマ組織内では細胞系列(lineage)の異なる細胞が混在するが、本研究でその機序の一端を解明し、腫瘍分化過程におけるエピジェネティクスの関わりを明らかにするとともに、エピゲノム機構を標的とした新しいがんの治療法への可能性を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目的は、がん幹細胞を樹立し、がん細胞におけるエピジェネティクスの可塑性と固定化の機序を明らかにすることである。がん幹細胞モデル、およびマウスモデルから、PRC2/EZH2を標的とした治療法の有用性を示すことができ、またmiRNAを介した組織不均一性に機構を明らかにした。これらの結果を論文として2報に纏め現在リバイス中である。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までの研究により脳がん幹細胞の分化の際には、ポリコーム複合体PRC2/EZH2による遺伝子制御が重要であることを見出した。またRNA-sequence解析から、脳がん幹細胞の分化の際に発現が変化する非翻訳RNA(lincRNA)を同定した。本年度はPRC2/EZH2を特定の遺伝子座にリクルートする機序についてlincRNAとの相互作用を含めた解析を進める予定である。
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Research Products
(19 results)