2010 Fiscal Year Annual Research Report
貧酸素水塊環境下にある堆積物の非破壊状態分析に基づく環境変動評価
Project/Area Number |
22310006
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松尾 基之 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (10167645)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉森 賢司 東邦大学, 医学部, 講師 (30130678)
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Keywords | 貧酸素水塊 / 東京湾 / 堆積物 / 浚渫窪地 / 非破壊状態分析 / メスバウアー分光法 / X線吸収微細構造法 / 硫酸還元菌 |
Research Abstract |
本研究は、過去に発生した貧酸素水塊の履歴が直下の堆積物に記録されているものと捉え、堆積物を鉛直方向に採取し堆積年代別に元素の化学状態の変化を分析することで、過去数十年間の貧酸素水塊の履歴を明らかにすることを目的とする。分析に供した堆積物は東京湾で最も強い貧酸素水塊が発生することで知られる幕張沖浚渫窪地および隣接する比較参照点(平場)より不撹乱柱状採泥器を用いて採取した。堆積物は採取から速やかに前処理を行い、^<57>Feメスバウアー分光法によって堆積物中に含有する鉄の化学種分別を、^<210>Pb年代決定法によって各分画の堆積年代を決定した。その結果、浚渫窪地および平場すべての層において、粘土鉱物(Fe^<3+> clay)および珪酸塩(Fe^<2+> sihcate)の鉄化学種を観測した。しかし、浚渫窪地の試料中1980年、1987年、2008年に堆積した層についてはFe^<3+>であるhematiteと同定できる特徴的なスペクトルを観測したが、それ以外の層では検出されない興味深い結果が得られた。採取地点の堆積環境下で最適化した鉄に対するpH-Ehダイアグラムで堆積当時の堆積環境を検討した結果、hematiteの生成は直上の貧酸素水塊の規模が縮小している証拠であることが明らかになった。また、X線吸収微細構造(XAFS)法を用いることにより、浚渫窪地内堆積物ではコア全体でSO_4^<2->やSO_3^<2->と比較して相対的にS^<2->の存在比が極めて高い特徴があることがわかった。浚渫窪地から数百m程度離れた凌渫窪地外の試料と同様の比較をしても、浚渫窪地内の特異的な環境が明らかになった。さらに現在、還元環境下で生息する硫酸還元菌の生息数を鉛直方向に明らかにすることによって、生化学的な観点からも過去の貧酸素水塊の強度の指標を得る計画が進行中である。
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Research Products
(5 results)