2011 Fiscal Year Annual Research Report
貧酸素水塊環境下にある堆積物の非破壊状態分析に基づく環境変動評価
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22310006
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松尾 基之 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (10167645)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉森 賢司 東邦大学, 医学部, 講師 (30130678)
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Keywords | 貧酸素水塊 / 東京湾 / 堆積物 / 浚渫窪地 / 非破壊状態分析 / メスバウアー分光法 / X線吸収微細構造法 / 硫酸還元菌 |
Research Abstract |
本研究は、東京湾奥で特に夏期に強く発生する貧酸素水塊の挙動がその直下の堆積物に記録されているものと捉え、海洋堆積物を鉛直方向に採取し、堆積年代別に元素濃度や化学状態の変動を様々な手法で分析することによって、水質の調査だけでは把握することができない範囲や年代に貧酸素水塊の評価を広げていくことを目的とする。調査海域は貧酸素水塊が強く発生する東京湾の中でも、建設土砂の採掘によって生じた広大な浚渫窪地が存在する千葉県幕張沖を前年度と引き続き対象とした。本年度は幕張沖の浚渫窪地および平場において複数回調査船上から堆積物の採取および水中カメラによる海底面の観察を行い、過去の貧酸素水塊の発生について堆積年代別の機器中性子放射化分析法、57-Feメスバウアー分光法、X線微細吸収構造(XAFS)法、X線粉末回折法による詳細な分析を行った。幕張沖の堆積物は有機物含有率が高くヘドロ状であるため、堆積物の鉛直方向の分割、すなわち高時間分解の分析には非常に困難があった。そのため、これまでの分析では数年単位の平均値として貧酸素水塊の挙動を評価せざるを得ず、年単位で変動する貧酸素水塊の評価には改善の余地があった。本年度はこの点について改善を行い、特に過去数年の間に堆積した最表層部分について、約半年単位というこれまでにない高時間分解で堆積した堆積物の分取に成功した。その結果、FeやMnといった対象海域では比較的堆積環境を反映しにくい元素でも、浚渫窪地と平場の間で明らかな濃度差が生じ、堆積物表層では貧酸素水塊の還元的な影響を特に強く受けていることが明らかになった。また、青潮の発生に強く関与する堆積物中のSについては季節単位の影響が表層部のみならず、少なくとも下層30cm程度まで浸透していることが明らかになった。このことは夏期および冬期に採取された堆積物に存在した硫酸還元菌数の差異とも関連性があるものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東日本大震災の影響により、放射化分析を行う研究炉(日本原子力研究開発機構JRR-3MおよびJRR-4)が運転できない状況が続いているが、京都大学原子炉実験所における共同利用実験に課題申請し採択されたため、当初計画にあった分析は問題なく遂行されている。またX線吸収微細構造(XAFS)法を行う高エネルギー加速器研究機構における実験も運転再開には若干の時間を要したが、測定試料を調整する事によってこれまでと同等かそれ以上の結果を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
貧酸素水塊の出現頻度とその強度は年によって異なるため、単年度の研究結果のみから普遍性を考察するわけにはいかない。そこで、今後も昨年度及び一昨年度に得られた結果の検証をするために堆積物試料の継続的採取を行う。現状では本研究課題の遂行にあたり障害となる問題は発生していない。最終年度(平成25年度)のとりまとめにむけて、これまで発展させてきた試料分取方法や分析手法のさらなる向上をめざす。
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Research Products
(5 results)