2011 Fiscal Year Annual Research Report
HOxラジカルとの不均一酸化反応による有機エアロゾル粒子の親水性・光学特性変化
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22310018
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
金谷 有剛 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球環境変動領域, チームリーダー (60344305)
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Keywords | 有機エアロゾル / 大気中酸化 / 光学特性 / 不均一反応 / 吸湿特性 / 環境質定量化・予測 / 地球変動予測 / 大気現象 |
Research Abstract |
気候変化への強い関与が指摘されているものの、光学特性変化の過程解明が遅れている有機エアロゾルに関して、OH,HO_2ラジカルを曝露し、エイジングに伴う光学特性の変化を測定する実験を進めた。まず、インレット部で加湿制御のできる積分型ネフェロメータを整備し、エアロゾル粒子の散乱係数の湿度依存性を測定できるようにし、硫酸アンモニウム塩粒子の特性変化を測定することで方法を検証した。次に、パラヒドロキシ安息香酸、3,5-ジヒドロキシ安息香酸、レボグルコサン等の有機物について、純水の水溶液からアトマイズしてエアロゾル化し、エアロゾル粒子の散乱係数の湿度依存性を測定したところ、全般的には硫酸アンモニウムと比較して吸湿変化は著しく弱いこと、その中でも有機物質ごとに有意な特性の違いがみられることがわかった。さらに、これらの有機物水溶液について、低圧水銀ランプによって発生させたHOxラジカルによって酸化エイジングを加えたところ、黄色に着色する場合がみられ、物質が変化していることが示唆された。しかしながら、酸化後の水溶液について、同様にエアロゾル粒子の散乱係数の湿度依存性を測定したところ、パラヒドロキシ安息香酸ではわずかに湿度依存性の増大が見られたものの、概して大きな変化が起こらないことがわかった。中国と福江の野外大気で観測されたエアロゾル散乱係数の湿度依存性について、有機エアロゾル比率との対応関係を比較解析したところ、いずれの場合も無機水溶性成分による吸湿成長を同程度に抑制する傾向を保っていることが示唆され、中国から日本への大気輸送に伴う酸化によって、有機エアロゾルの散乱係数の湿度依存性は大きく高まっていないことが推測された。このことは、上記の実験の結果と整合的であると解釈された。また、本研究での濃度検定に用いるHOxラジカル測定装置について、他成分の干渉に関する検討を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HOxラジカル曝露量の定量化まで到達していないが、酸化実験や散乱係数の湿度依存性変化測定の実験方法が確立し、有機エアロゾル酸化によって散乱係数の湿度依存性が変化することに関する知見が得られ、実大気観測との比較解釈などが進んだため。
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Strategy for Future Research Activity |
より多くの有機物に関する知見を得て、総合的な解釈を行う。酸化に伴う吸収スペクトルの変化についても合わせて測定を行う。実大気試料に対する曝露実験も行う。特性変化をラジカル曝露量に対して定量的に記述することを目指し、HOxラジカル測定装置の整備を進める予定である。
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