2011 Fiscal Year Annual Research Report
微細藻類が生産する核内受容体活性化物質の水生動物への影響
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22310020
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
彼谷 邦光 筑波大学, 生命環境系, 教授 (40124341)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白石 不二雄 国立環境研究所, 環境リスク研究センター, 研究室長 (30113476)
佐野 友春 国立環境研究所, 環境計測研究センター, 主任研究員 (10178808)
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Keywords | medaka ER / yeast-two-hybrid assay / cyanobacteria / E2 / Planktothrix agardhii / warerblooms / Cylindrospermopsis raciborskii / nuclear receptors |
Research Abstract |
研究の目的:富栄養化した湖沼で大量発生する微細藻類が水生動物細胞のレチノイド系やステロイド系の核内受容体を活性化する物質(リガンド)を多量に生産していることを見出した。本研究では微細藻類の生産する核内受容体活性化物質の化学構造の解明とそれらの水生動物への影響を明らかにすることを目的とした。二年目である本年は藍藻類に多く見られるRetinoic acid Receptor(RAR)以外の核内受容物質を調査し,RAR以外の核内受容体を活性化物質を調べ、水生動物固体や生態系の影響の可能性を検討した.研究方法:藍藻類に存在するメダカの女性ホルモン核内受容体Medaka Estrogen Receptor(mdER),ダイオキシン等の芳香族炭化水素に対する受容体Aryl Hydrocarbon Receptor(AhR)および異物応答に関与する核内受容体Constitutive Androstane Receptor(CAR)を活性化する物質の強さをYeast-two-hybridシステムを用いてアッセイした。基準物質はERに対して17β-estradiol(E2),AhRに対してβ-naphtofla vone,CARに対してはρ-t-octylphenolを用い、それぞれの受容体に対する活性化の強さは基準物質等量に換算して表した。藍藻類はSpirulina(4株),Oscillatoria(2株),Microcysitis(3株)Planktothrix(6株),Phormidium(2株),Gloeocapsa(1株),Cylindrospermopsis(1株),Nostoc(1株)、Raphidiopsis(1株)等の浮遊性のものと、付着性のSpi-rogyra(1株)およびCladophora(1株)を用いた。結果:RARに対する活性はは調べた全ての藍藻類から検出され、その強さは170~20,000μg/kg as ATRAであるのに対して、AhRに対する活性はMicrocystis aeruginosa NIES1222およびOKI-9-1の2strainsおよびNostoc sp.のイギリス株DUN-1以外の21株から検出され、その強さは160-2,000μg/kg as b-NFであった。CAR活性化物質も弱いながら、調査した全てから検出され、その強さは5-30μg/kg as p-t-OPであった。一方、mdERを活性化する物質を産生する藍藻は3株のみであった。それらの中でもっとも強い活性ははPlanktothix agardhii NIES-204の280μg/kg as E2であった。また、Cylindrospermopsis raciborskii AWT205で130μg/kg as E2であった。これらの藍藻はいずれも水の華形成藍藻であり、高密度になることから、魚類の生殖への影響を検討する必要がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2011年3月11日に発生した東北地方大震災により茨城県つくば市に立地する筑波大学、国立環境研究所も甚大な影響を受け、建物、実験設備、実験器具はほとんど使用不能になった。これらの復旧、修理に6カ月以上を費やした。本格的な実験を再開したのは昨年10月からであった。本来ならば、2年目である2011年は昨年度同定したRAR活性化物質の本体である7-hydroxyretinoic acidを合成し、水生動物への影響も調べる予定であった。当初6カ月間程度あった遅れは、現在2カ月間程度に縮まってきた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である次年度は2カ月の遅れを取り戻し、当初の研究計画通りに研究を進める予定である。 最終年度は藍藻類に存在する核内受容体活性化物質が水生動物の個体や生態に、特に生殖に与える影響を調べ、アオコの水生動物への影響を明らかにする。
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