2011 Fiscal Year Annual Research Report
アミにおける生殖・発生異常とその発生メカニズムを活用した環境水評価手法の開発
Project/Area Number |
22310023
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Research Institution | Prefectural University of Kumamoto |
Principal Investigator |
古賀 実 熊本県立大学, 環境共生学部, 教授 (40131916)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
有薗 幸司 熊本県立大学, 環境共生学部, 教授 (70128148)
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Keywords | 環境技術 / 有害化学物質 / 生態学 / マイクロアレイ |
Research Abstract |
今年度は昨年度に引き続きNP異性体の急性毒性試験および成長成熟試験を実施した。成長成熟試験で得られた結果は、熊本県内における検出濃度をもとに環境リスクについて考察し、環境水の評価へ応用するための基礎データとした。急性毒性試験の結果は、NP-E:500μg/L、NP-A:512μg/L、NP-D:574μg/L、NP-M:621μg/L、NP-H:624μg/Lとなり、異性体ごとによる毒性の違いを明らかにした。また、成長成熟試験の結果、NP-C'のLOECをみると、累積総脱皮数は5μg/L、体長は0.5μg/L、頭胸甲長は0.5μg/L、湿重量は50μg/Lであり、各エンドポイントで作用する濃度が異なることが明らかとなり、アミの成長・成熟の遅延を引き起こすことが示唆された。さらに、NP-Aは、急性毒性は弱かったが、5μg/L曝露において脱皮の数の減少たよる成長の遅延を引き起こすことが明らかとなった。このことから、急性毒性が弱くても長期間曝露されることで、成長に影響を及ぼす可能性が示唆された。NP-Iについては脱皮の数は増加傾向にあるが、アミの体長、頭胸甲長、湿重量を低下させ、それにより成長を抑制し、未成熟個体を増加させる傾向があることが示唆された。これらのことから、成長成熟試験では、各エンドポイントで作用する濃度も、各物質での作用点も異なることが示唆された。また、本研究の成長成熟試験の最小作用濃度の結果と熊本市の下水処理放流水中の濃度を比較したところ、それぞれの異性体の熊本における単独のリスクは低いことが示唆された。しかしながら環境中においてはNP異性体が単独で存在するとは考えられないため、醗異性体の存在比や他の化学物質と混合された際の影響についてなども検討する必要性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
NP異性体における基礎的知見の集積は順調に進んでいる。しかしながら生体内での作用に関する知見の集積が不十分であり、昨年度作製したDNAマイクロアレイを用いて、成長、成熟に影響が見られた際の生体内の影響をより詳細に調べる必要性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで得られている結果をもとにDNAマイクロアレイを用いた評価も実施し、一つの試験手法の確立をおこない、環境水評価への応用をすすめる。環境水評価への応用は、実環境中で検出された濃度から毒性や環境リスクを予測する予定である。
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