2011 Fiscal Year Annual Research Report
タンパク質のマルチ翻訳後修飾による損傷乗り越えDNA複製の制御
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22310034
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
益谷 央豪 名古屋大学, 環境医学研究所, 教授 (40241252)
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Keywords | DNA修復 / DNA複製 / 損傷乗り越え複製 / 翻訳後修飾 / モノユビキチン化 / DNA損傷 / トレランス / DNAポリメラーゼ |
Research Abstract |
目光中の紫外線や種々の化学化合物や活性酸素などの様々な要因により、DNAは容易に損傷を受ける。DNA損傷は細胞死や突然変異、癌化、老化の原因となるが、細胞は巧妙なDNA損傷対応機構を備えている。高発癌性遺伝疾患である色素性乾皮症バリアント群の原因遺伝子産物であるDNAポリメラーゼ・イータ(Polη)は、効率よく正確な損傷乗り越え複製を担うことにより、主要な紫外線損傷による弊害を防いでいる。しかし、Polηは本質的には突然変異を誘発する誤りがちな性質を持つこと、誤りがちな性質を備えた損傷乗り越え複製ポリメラーゼが複数存在すること、また、損傷乗り越え複製以外にも損傷DNAを複製する未解明の機構が存在することが明らかになってきている。そして、それらの制御には、DNA複製のスライディングクランプであるPCNAの164番目のリジン残基の翻訳後修飾が重要な役割を担う。本課題では、PCNAがホモ3量体であることに着目した。本年度は、164番目のリジンをアルギニンに置換したPCNA[K164R]変異体を安定に発現した細胞株を樹立し、以下の諸点について解析を行った。タグのないもの及びHAタグを付加したPCNAを導入して検討し、外来性PCNAが3量体に取り込まれ、外来と内在性の分子よりなる3量体が形成されることを調べた。そして、紫外線照射後のPCNAのユビキチン化の程度及び内容を解析した。PCNA[K164R]変異体を発現させても、細胞の増殖には影響を与えず、明確な紫外線感受性は示さなかった。また、紫外線照射後にPCNAのモノユビキチン化に依存して観察されるPolηのフォーカス形成も認められた。これらめ結果から、この細胞内で、Polηは正常に機能していると考えられる。今後、細胞周期の進行や損傷乗り越え複製の正確さなどについて検討を進める必要がある。以上の細胞レベルの解析に加えて、ホモ3量体中の特定の分子をユビキチンとPCNAの融合タンパク質に置換した3量体組換えタンパク質を作成した。これを用いて、試験管内ユビキチン化反応系の構築を進めそいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、変異体を導入した細胞株を構築し、細胞レベルでの生理的意義の解析に着手し、また、特殊な3量体を組換えタンパク質として得る系を構築することに成功しており、おおむね研究実施計画に即して進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本年度までに構築した細胞レベル及び分子レベルの実験系の結果を相互にフィードバックし、予定通り、損傷乗り越え複製の制御機構の解析を進めて行く。さらに、将来の発展性を鑑みて、損傷乗り越え複製の陰に隠された未解明のバックアップ機構の存在を念頭においた解析を併せて進めて行きたいと考えている。
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Research Products
(11 results)