2011 Fiscal Year Annual Research Report
高効率型微生物燃料電池における微生物共生システムの解明
Project/Area Number |
22310045
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
二又 裕之 静岡大学, 工学部, 准教授 (50335105)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松田 厚範 豊橋技術科学大学, 工学部, 教授 (70295723)
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Keywords | 微生物燃料電池 / 微生物生態系 / 種間水素伝達系 / 生ゴミ分解 / 膜電極複合体 / 低炭素循環型社会 |
Research Abstract |
昨年度までの成果を基に、H23年度は3つの微生物燃料電池(MFC)研究を実施した。その概要を述べる。 1)新規電極複合体の性能評価と微生物群集構造の解析 Nafionよりも安価でプロトン移動能力に遜色がないと想定されたSPEEKを材料に膜電極複合体(MEA)を作成し(研究分担者松田教授による)、その評価を実施した。MFCは、生ゴミ分解溶液を連続的に供給した。約1年間運転した結果、この新規MEAは、Nafion117と比較し、正極の電位が数十mV低い傾向にあった。内部抵抗に顕著な差は認められなかった。電流密度は安定期おいてNafion117設置MFCの約50%~80%であった。両MFCにおいて異なる微生物群集構造が確認され、おそらく膜を透過する空気(酸素)の影響によるものと推察された。今後、この点を改良できれば十分Nafionの代替品となり得ることが示唆された。 2)外部抵抗がMFCの発電性能と微生物群集構造に及ぼす影響 10Ωと1000Ωの外部抵抗を設置したMFCを長期間運転し、その発電性能と微生物群集構造を解析した。その結果、外部抵抗によって微生物群集構造は大きく影響を受け、その作用の仕方は外部抵抗によって異なった。外部抵抗の変更に伴い微生物群集構造が変化すること、また、外部抵抗によるショックは、高効率型電気生産微生物の集積に寄与する可能性が示唆された。 3)生ゴミ型MFCにおける発電特性と微生物群集構造の特徴 生ゴミを電子供与体とするMFCを長期間運転し、その発電特性と微生物群集構造の特徴を解析した。その結果、MFCは極めて強いバイアスを示すこと、負極溶液中の微生物群とバイオフィルムは、電子フローを介した緩やかな共生系にあることが示され、負極溶液中の柔軟な群集構造とバイオフィルムにおけるGeobacterの特異的な優占化が、不均一系での電気生産能力の向上に寄与したと推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、微生物共生システムの解明を通じて更なる高効率型微生物燃料電池の構築を図ることにある。これまでの研究から、高効率型電気生産微生物の選択的優占化に必要であろうとされる"刺激"や"工夫"について複数の知見が得られた。今後、これらの仮説に基づく研究を実施することにより、当初の計画以上の進展が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
空気(酸素)の混入が大きな課題であるため、この点の改良を図りつつ、外部抵抗による電気生産微生物生態系の制御に関する研究を展開する。特に内部抵抗の削減と電流密度の向上、それらを担う負極溶液中およびバイオフィルムの微生物群集について、微生物学的および微生物生態学的に解析を進める。特に、これまでの分子レベル解析をさらに深化させると同時に、微生物の分離にも挑戦し、今後のシーズ作りも図って行く予定である。
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