2010 Fiscal Year Annual Research Report
過栄養化した港湾でも自立・永続可能な繊維基質を用いた藻場創出技術に関する実証研究
Project/Area Number |
22310049
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
上月 康則 徳島大学, 大学院・ソシオテクノサイエンス研究部, 教授 (60225373)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山中 亮一 徳島大学, 大学院・ソシオテクノサイエンス研究部, 講師 (50361879)
三好 真千 徳島文理大学, 理工学部・ナノ物質学科, 助教 (40399168)
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Keywords | ワカメ / ムラサキイガイ / 過栄養 / 港湾 / 直立護岸 / 藻場 / 物質循環 / 大阪湾 |
Research Abstract |
本研究によって,次の6つの成果を得ることができた.(1)ワカメが分布するDL-1.5mより浅い水深帯では貧酸素化することはなかったが,夏期には透明度は約1.0m程度しかなかった.(2)2009年1月には,ワカメの発芽が見られたが,繊維の種類によって発芽数は異なり,最も多かったビニロンには,長さ10cmの繊維基質1個あたり平均32株ものワカメがみられ,春には葉長1.8mにも生長した.なおワカメは繊維基質以外にはほとんど定着しなかった.(3)繊維基質への付着物と二枚貝の個体数との関係を見ると両者には正の相関があったが,それらの量と発芽数との間には明確な関係は見られなかった.ワカメの発芽数は,海中観察によると波を受けて揺動しつつも直立している繊維上に多く,直立できず団子状に絡み合うような柔らかい繊維には,発芽数が少ない傾向にあった.(4)繊維基質を設置した水深で比較すると,水深DL-1.0mに設置したものに比較して,DL-1.5mのものの方が発芽数は多かった.この原因は,浅いDL-1.0mの方で,夏期により低塩分化したためと思われる.(5)2010年1月にも従来と同様に基質繊維上でワカメは発芽した.特にビニロンの基質上の生物を鉛直方向に見ると,ワカメは水深DL-0.0m~-1.5mで発芽し,同水深帯ではシロボヤ,ユウレイボヤ,尋常海綿綱などの動物も多く付着していた.(6)以上のように,過栄養化した海域でも,二枚貝などの付着動物に阻害されることなく,自立的に世代交代し,ワカメ藻場を形成させることのできる繊維材料を見出すことができた.特に適度な弾性を持つ繊維であれば,他の動物と棲み分けを可能,つまり場をめぐる競争を回避することのできる環境を提供することができるというメカニズムも把握することができた.
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Research Products
(1 results)