2010 Fiscal Year Annual Research Report
有機-無機複合体を基盤とした分子・イオンの凝縮・変換システムの創製
Project/Area Number |
22310058
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
内田 さやか 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 准教授 (10361510)
|
Keywords | ナノ材料 / 複合材料・物性 / 自己組織化 / 触媒・化学プロセス |
Research Abstract |
二欠損型シリコタングステートと有機アンモニウムの複合化触媒I・H_2Oを合成した。粉末X線構造解析及び分子力学計算により、シリコタングステートが正方晶格子を形成し、有機アンモニウムがシリコタングステートを囲むように存在していた。複合体I・H_2Oは格子内に細孔を持たなかった。複合体I・H_2Oに含まれる結晶水は室温真空排気により脱離しゲストフリー相Iが得られた。複合体Iの粉末XRDパターンはI・H_2Oと同様であったことから、結晶水の脱離による構造変化は起こらない。複合体Iの窒素比表面積は小さく、I・H_2Oの結晶格子内に細孔が見られないことと合致する。複合体Iは酢酸エチル溶媒中で過酸化水素を酸化剤としたI-ヘキセンのエポキシ化反応に活性を示した。反応中にIをろ過により除去すると反応が停止し、反応溶液中にIの溶解は見られず、Iは不均一系触媒として働いた。次に、Iの反応基質及び酸化剤の吸着特性について検討した結果、Iは細孔を持たないにもかかわらず、酢酸エチル共存下でI-ヘキセン、過酸化水素を吸着することが明らかとなった。酢酸エチルの吸着に伴いIの結晶格子は正方晶から立方晶へと変化し、格子体積が増加した。以上の結果より、I-ヘキセン及び過酸化水素は酢酸エチル共存下でIに吸着され、固体バルク全体で反応が進行するものと考えられる。複合体Iに吸着された酢酸エチル分子の運動性を、^<13>C-固体CPMASNMRスペクトルの接触時間に対するシグナル強度依存性を用いて検討した。その結果、接触時間の増加に伴い、Iを構成する有機アンモニウムのブチル鎖のシグナルが速やかに減衰したのに対し、酢酸エチル分子のシグナルは増加し続け、酢酸エチル分子の運動性はブチル鎖と比べて非常に高いことがわかった。このことは、Iに吸着された酢酸エチル分子がブチル鎖の間をくぐって固体バルク内を速やかに拡散していくことを示唆している。
|
Research Products
(5 results)