2011 Fiscal Year Annual Research Report
液中レーザーアブレーションによる生理活性物質ナノ粒子分散液の作製
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22310067
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
朝日 剛 愛媛大学, 理工学研究科, 教授 (20243165)
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Keywords | ナノ粒子 / コロイド / 生理活性物質 / フラボノイド / レーザーアブレーション / 顕微分光 / 単一粒子分光 |
Research Abstract |
難水溶性活性物質として8種のフラボノイド類とポリフェノールのクミンについて液中レーザーアブレーションによるナノ粒子化を詳細に検討した。天然物由来のイソフラボンとフラボンにおいて、飽和水溶液の200倍の高濃度で安定なナノ粒子水分散液の調整に成功した。顕著な分子の光分解も起こらないことを確認した。一方、同じフラボノイド類であるカテキンやフラボノールではレーザー励起による分子の光分解が起こり、本手法によるナノ粒子作製に適さないことが分かった。クミンではナノ粒子生成と同時に固体光反応が起こるが、レーザー励起条件を適当に調節することで、分子分解を抑えつつ安定なナノ粒子コロイドが作製できることが分かった。蛍光性色素のナノ粒子作製に新たに取り組み、ナノ粒子の蛍光特性が界面活性剤の添加によって大きく変化することを見出した。さらに次年度に予定する蛍光性有機ナノ粒子の細胞取り込みの動態観察のための顕微蛍光画像観測装置を構築し、作製した蛍光性ナノ粒子の単一粒子分光が行えることを確認した。一方、本手法で作製したナノ粒子が水中で安定に分散する機構を明らかにするために、C60ナノ粒子の分散安定性を検討した。C60ナノ粒子表面は負に大きく帯電しており、さらにナノ粒子表面に水のpHに依存して電離する官能基が存在することを示唆する結果を得た。ナノ粒子作製手法の改良として、これまでの密閉容器に原料粉末を水に懸濁させレーザー照射するバッチ法ではなく、フローセルを用いたナノ粒子装置を構築した。原料懸濁液に照射するレーザーパルスを制御しつつ連続的にナノ粒子を取り出すことができ、耐光性の低い化合物のナノ粒子化に有効であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた難水溶性フラボノイド類のナノ粒子水分散液の作製に成功し、作製条件の最適化に関しても多くの知見が得られた。またフラボノイド以外の有機化合物についてもナノ粒子化を検討することができた。作製ナノ粒子の細胞・微生物活性についてもすでに初期的な結果を前年度までに得ており、おおむね当初の計画通り進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究より、いくつかの難水溶性生理活性物質について分散安定性の高いナノ粒子水分散液の作製とその粒子サイズを変えることに概ねめどがついている。今後は作製したナノ粒子分散液の物理・化学的性質を調べること、および動物細胞の薬理活性に対するナノ粒子効果について重点的に検討し、具体的事例を増やすことによって、本研究で提案するナノ粒子水分散液作製法の有効性を明示できるよう研究を進める。
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