2011 Fiscal Year Annual Research Report
分子線エピタキシャル成長によるウエハスケールグラフェン形成
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22310077
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Research Institution | NTT Basic Research Laboratories |
Principal Investigator |
前田 文彦 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, 機能物質科学研究部, 主幹研究員 (70393741)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
日比野 浩樹 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, 機能物質科学研究部, 主幹研究員 (60393740)
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Keywords | グラフェン / 分子線エピタキシ法 / エチレン / 成長過程 / ホモエピタキシャル成長 / 供給律速 / ヘテロエピタキシャル成長 / 微傾斜基板 |
Research Abstract |
グラフェンはBeyond CMOSの有望なエレクトロニクス材料と目されて急激に研究が進展しているが、大規模集積化に必要なウエハサイズの大面積グラフェンの形成法が未確立である。そこで、ガスソース分子線エピタキシ法を提案し、その確立を目指している。この目的のため、本研究では、最適成長条件探索に必要なホモエピタキシャル成長による成長過程の解明とヘテロエピタキシャル成長の試行による2段階で進める。平成23年度には、平成22年度の研究を発展させて成長過程の解明をさらに進め、成長条件最適化の指針を導くよう研究を進めた。 具体的には、昨年度指針として得られたエッチング反応の抑制のため、エッチングの原因となる水酸基を含まないエチレンを成長材料とする成長の実現を図った。この際、通常の傍熱型加熱方式ではカーボンが堆積して絶縁不良が起こるため、赤外線加熱式マニピュレータが適しており、一昨年度導入した本方式の加熱装置の立上げを行った。また、成長時の原子レベルの表面形状変化と成長速度の解析によって成長過程の解明と成長条件の最適化に有効な高速電子線回折法を用いるため、大排気速度排気装置を導入した。以上によって成長実験に必要な装置が整備され、成長条件の探索を行ってエチレンを用いたグラフェン成長を実現した。さらに、高真空成長によって成長材料供給量増が成長量増となる供給律速を実現し、成長条件最適化に向けて高い自由度が得られることとなった。以上の進展により、BN上へのヘテロ成長実験に進むことが可能となった。一方、微傾斜SiC基板を用いてAr雰囲気中高温加熱でグラフェン形成の研究を行い、グラフェンがステップ領域に優先的に形成され、グラフェン形成部と非形成部をストライプ状に形成できることが判った。この状態ではグラフェンのエッジが存在することが期待され、ホモエピタキシャル成長用基板として有望であることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
応募時の研究計画では、23年度末にホモエピタキシャル成長の実験によって成長過程を解析して成長条件最適化に向けた指針を得、次年度以降のヘテロ成長への展開へと進むことを計画としていた。昨年度までの研究経過においては、上述の通り、エッチングの要請という指針を得てエチレンを用いた成長を実現して、ほぼこの計画通りに進んだ。本年度からのBN上へのヘテロ成長へ進めるように進展しており、そのため、おおむね順調と評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、昨年度得られた知見と成長装置を駆使してヘテロ成長実験を推進する。特に、六方晶窒化ボロン(h-BN)基板上への成長実験に着手する。このh-BN結晶の大面積基板はNTT以外では入手不可能で、その特性はまだよく理解されていない。そこで、第一に成長用下地基板として表面清浄化法を確立した後に、高温のグラフェン成長時における界面反応や基板の安定性などを調べ、ヘテロ成長用基板としての適正を見極める。 また、大面積h-BN形成用基板として一般的にサファイヤを用いるが、絶縁物質であり、表面分析法と親和性が良くない。そこで、グラフェン上へのh-BN形成を検討する。これによって、光電子分光などの表面分析法を用いてh-BNとのヘテロ構造形成時における界面反応のその場解析が可能になり、効率的に研究を進めることができるようになる。
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