2011 Fiscal Year Annual Research Report
環境感受性色素による生体膜界面水素イオン濃度・膜電位の同時近接場光学計測法の開発
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22310078
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
梅田 倫弘 東京農工大学, 大学院・工学研究院, 教授 (60111803)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩見 健太郎 東京農工大学, 大学院・工学研究院, 准教授 (80514710)
太田 善浩 東京農工大学, 大学院・工学研究院, 准教授 (10223843)
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Keywords | 近接場光学顕微鏡 / 蛍光感受性色素 / ミトコンドリア / pH / ネクローシス / 多光子吸収 / フェムト秒レーザー / プロトンポンプ |
Research Abstract |
本研究では、酸化ストレスによるネクローシスがミトコンドリア内膜の水素イオン濃度の勾配形成能の低下で生じることを証明するために、二光子吸収励起レシオ計測蛍光近接場光学顕微法(TARF-SNOM)を開発することを目的とする。本年度では、フェムト秒短パルスレーザーを励起光源として、本研究目的に最適なpH感受性色素を選択して、近接場光学顕微鏡によるレシオ計測光学系の性能を明らかにするとともにミトコンドリア活性をpHの計測で評価できることを目的とし、以下を遂行した。 (1)フェムト秒短パルスレーザー(新規購入)をプローブに入射させ環境感受性色素内における出射端での光非線形光学現象による2倍波光(波長400nm)が誘起されることを確認するとともに、これによる蛍光レシオ応答を測定し、YAGレーザーにおける校正結果と同様の結果を得た。これにより、本提案手法がフェムト秒短パルスレーザーでも使用可能であることが検証された。また、その蛍光の2波長強度比(FIR)からpHが算出可能であることを示し、さらにそのFIRが従来法によるpH測定と比べて相関係数0.984で非常に高い相関を持つことを示した. (2)pH値に対するFIRの標準偏差が0.0002~0.004と非常に小さく,計測したFIRから正確なpHが算出できることを明らかにした. (3)HCL溶液の添加によるプロトン注入によって時間的なpH変化を観測することで、開発した装置が0.1sの時間分解能を持つことを明らかにした. (4)開発したTARF-SNOMによってミトコンドリアの活性をpHを介して評価することに成功するとともに、異なるミトコンドリア密度でpH変化量の違いを観測することに成功した. 以上の結果から,TARF-SNOMによってミトコンドリア活性評価が可能であることが示すことができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究計画の達成度評価のポイントは、開発した装置TARF-SNOMのミトコンドリア活性に対するpH値上応答を検出出来るかと言う点である。その結果、pH値に対する蛍光強度比FIRの検量線は、色素メーカーからのデータシートに基づく特性、単光子吸収により得られた特性と比較してほぼ一致していること、濃度の異なるミトコンドリア試料に活性栄養を添加することでpH値応答に大きな変化が見られたこと、さらに、その濃度に対するpH値変化量に正の相関が見られることなどを明らかにしたことである。これらの成果は当初の計画と比べて、膜電位評価が遂行できなかったことを除いて、ほぼ順調だったと言える。なお、膜電位評価についてはすでに実験を進めており、近々に測定結果が出ると期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度として、前年度においてフェムト秒短パルスレーザーによる二倍波励起近接場プローブによるpH値測定実験の研究成果をもとに、酸化ストレスを受けたミトコンドリア生体膜界面における水素イオン濃度および膜電位計測を行い、その分布、時間ダイナミクス、ミトコンドリア内膜と界面外部近傍における濃度勾配変化を明らかにする。 (1)ミトコンドリア活性の評価指標の一つである膜電位の計測を行うため、膜電位応答蛍光色素を選定し、開発したTARF-SNOMで計測評価できることを明らかにする。 (2)TARF-SNOMによるミトコンドリア膜電位と水素イオン濃度勾配の同時計測を様々な条件下で行い、開発した装置の性能を評価する。 (3)t-BuOOHを100nMだけ添加してミトコンドリアに酸化ストレスを与えた場合と与えない場合のミトコンドリアに対して、TARF-SNOMによる膜電位と水素イオン濃度勾配の同時計測を行う。 (4)さらに、マルチプローブの他の一本を、ミトコンドリアの端部にセットして酸化ストレスにおけるpH値及び膜電位変化を検出する。これらのpH値・膜電位変化の時間的挙動を同時に記録してミトコンドリア膜間腔の水素イオン濃度差および膜電位を明らかにし、酸化ストレスによるミトコンドリアのATP濃度の減少と細胞死の誘導条件が一致していることを示す。
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