2011 Fiscal Year Annual Research Report
単一不純物制御シリコンナノエレクトロニクスに向けた原子スケール設計・評価技術創製
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22310085
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
水田 博 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 教授 (90372458)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田部 道晴 静岡大学, 電子工学研究所, 教授 (80262799)
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Keywords | ナノデバイス / 不純物原子 / 第一原理計算 |
Research Abstract |
More Moore型シリコンナノエレクトロニクスの今後の進展において最も深刻な課題となっている微細CMOSチャネル内ランダムドーパントの問題に対して、密度汎関数理論と非平衡グリーン関数法に基づく第一原理シミュレーションを用い、今年度は、シリコンナノロッド・ナノプレート内の単一ドーパント原子および、単一ドナーとアクセプターを同時にドープした複合ドーピング系に対して、エネルギー準位、イオン化エネルギー、波動関数の空間分布、および輸送特性に注目して解析を行った。ナノ構造中におけるドーパント原子の電子状態はバルク中と大きく異なり、量子閉じ込め効果や誘電閉じ込め効果などに加え、限られた数のシリコン原子群とドナー原子が形成する混成軌道としての性質が支配的になると考えられる。 今回のシミュレーションでは、長さをパラメータとした直径1nmのSiナノロッドと、幅2.2nm、長さ2.4nm、厚さ0.7nmのSiナノプレートにリンドナー原子を1個、中心にドープした構造の電子状態を、LCAO基底を用いた密度汎関数理論に基づく第一原理シミュレーションを用いて解析した。その結果、イオン化エネルギーは、バルクSiでの値45meVより10倍以上大きい600~800meVであり、ボーア半径と同程度か、それ以下のチャネル長(<~4nm)では、ほぼこの大きさで一定していることがわかった。これは、量子サイズ効果に起因する。またPDOSの空間分布を1原子単位で解析した結果、Pドナー基底状態は、バルクシリコン中の1S状態と異なって空間的異方性をもち、Pドナーを中心として<110>軸方向に伸びていることがわかった。その他の方位に対してはほとんど広がらず局在していることから、ドナーの電子状態は非対称に広がるということが見出された。これは、Si原子列に由来する誘電率の異方性による可能性が大きいと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本プロジェクトの主タスクである第一原理シミュレーションを用いた大規模解析(タスク[T1][T3])については、計画した本年度の目的をほぼクリアした。副タスクであるTip Enhanced Raman Spectroscopy(TERS)によるシリコンナノ構造中のドーパント検出(タスク[T2])については、シリコンナノワイヤ中でのi-Si/n+-Si界面の位置を同定することに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度では、ボーア半径と同程度の極微シリコンナノロッド・ナノプレート内に埋め込まれたドナー原子・アクセプター原子の電子・正孔空間分布とイオン化エネルギーの解明、単一・少数ドナー原子とアクセプター原子を同時にドープ(複合ドーピング)した場合の電子状態と構造安定性、およびドーパントペアリングの可能性の解明を行う。また、英サザンプトン大学SNCの低温ティップエンハンストラマン分光(LT-TERS)技術と、ヘリウムイオン顕微鏡技術を併用して、サスペンデッド・シリコンナノロッドにおける個別ドーパントの配置と素子の電気特性相関の解明を試みる。
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Research Products
(10 results)