2010 Fiscal Year Annual Research Report
鉄代謝異常を伴う先天性運動失調マウスの病理学的及び分子生物学的解析
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22310122
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
橋本 尚詞 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (80189498)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
日下部 守昭 東京大学, 農学生命科学研究科, 特任教授 (60153277)
立花 利公 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (80163476)
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Keywords | 先天性運動失調マウス / 鉄沈着 / トランスフェリン受容体c / Steap3-2 / 脊髄神経節 / NF-200 / 筋固有知覚 |
Research Abstract |
本年度は、次年度に行うパラメトリック連鎖解析の準備として、ICR系の先天性運動失調ヘテロ確定個体とC57BL/6及びC3H/HeJの近交系個体とを交配させ、第2世代、第3世代で運動失調を発症した家系の各個体よりDNA抽出用の試料を採取した。また、第1世代を再度近交系マウスと交配させ、同様に運動失調を発症する家系の試料採取を行った。これらの交配によって得られた運動失調マウスを詳細に観察し、ICR系統で見出された運動失調と同じ症状を示すことを確認した。 運動失調、見かけ正常、野生型の腎臓の厚切り切片を作製し、鉄沈着を調べたところ、野生型は老齢でもほとんど鉄沈着を生じていないのに対し、運動失調と見かけ正常は生後50日過ぎより鉄の沈着が始まり、100日目までは急増したが、それ以降は重度の鉄沈着で変化はなかった。鉄沈着の程度は運動失調の方が、また雄よりも雌の方が重度であった。鉄沈着部位を電子顕微鏡で観察した結果、腎臓では近位尿細管上皮細胞のライソゾーム内に鉄が局在していた。また、運動失調、見かけ正常、野生型の肝臓と腎臓における9種の鉄代謝関連遺伝子の発現について調べたところ、運動失調の肝臓でトランスフェリン受容体cの発現が増加し、腎臓ではSteap3-2の発現が低下していた。 運動失調の脊髄神経、後根、脊髄神経節に見られる空胞について、各種神経マーカーを組織化学的に調べたところ、空胞部位はNF-200に陽性であり、Isolectin B4には陰性であった。また、空胞はユビキチン、CGRPにも陽性を示したが、空胞には全体が陽性に染まるものと陽性の中にさらに陰性の空胞が見られるものがあった。しかし、小脳の空胞はユビキチン以外は陰性であった。これらのことより、空胞を生じているのは筋の固有知覚を支配する感覚神経であり、固有知覚の異常によって運動失調を発症している可能性が示唆された。
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Research Products
(1 results)