2012 Fiscal Year Annual Research Report
鉄代謝異常を伴う先天性運動失調マウスの病理学的及び分子生物学的解析
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22310122
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
橋本 尚詞 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (80189498)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
日下部 守昭 東京大学, 農学生命科学研究科, 特任教授 (60153277)
立花 利公 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (80163476)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 運動失調 / 神経変性疾患 / モデルマウス / 脊髄神経 / 三叉神経 / 鉄代謝 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度に行った連鎖解析の結果より運動失調発症と強い連鎖があると推定される約10Mbps領域の全ゲノム解析を行うための準備として、Wt確定マウス、hetero確定マウス、運動失調発症マウスの全10個体よりゲノムDNAの抽出を行った。次いで、全ゲノムより対象領域のみを抽出して濃縮するために、Agilent社のSureselectシステムを設計・作製し、これを用いて対象領域の抽出・濃縮を行った。次年度にこの抽出試料についてゲノム解析を行う予定である。 C57BLとの交雑系において、発症前個体のGenotypingを行い、三叉神経、脊髄神経の解析を行ったところ、生後8日目まではGenotypeによる違いを認められなかったが、9日目になるとhomo個体では神経線維に多数の膨隆部が生じており、NF-200の蓄積が認められた。電子顕微鏡で観察したところ、膨隆した末梢突起がシュワン細胞に取り込まれているが、髄鞘が未形成のものも形成途中のものもあった。また、9日目では核周部にNF-200は蓄積されていないが、13日目には蓄積が始まっており変性が核周部にまで及んでいると考えられた。これらのことより、症状が出現する28日目頃よりも遙かに以前の9日目から神経の変性が始まっているのが明らかとなった。 交雑系において見かけ正常をGenotypingによってWtとheteroに区別し、さらにhomo(異常発症個体)を用いて、4,8,12,16週における肝臓と腎臓の鉄代謝関連遺伝子の発現を調べたところ、homo個体で発現の認められない遺伝子はなかったが、Fth1, Slc11a1, Cpは4Wではhomoで高く、その後はhomoで減少し、Hamp, Trfr2, Alas2-v1は全般に減少し、Tfrcはわずかに増加しているのが認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、次年度に行うゲノム解析のために、Wt確定マウス、hetero確定マウス、運動失調発症マウスより、雌雄合わせて計10個体から、運動失調の発症と強い連鎖が疑われる約10Mbpsの遺伝子領域を抽出・濃縮したが、ゲノム解析に十分な純度と量の試料が得られていた。これによって次年度には精度の高い解析結果が得られるものと期待される。 また、C57BLとの交雑系において、運動失調発症以前の生後9日目から脊髄神経、三叉神経の変性が始まっていることが明らかとなったが、これは交雑系では、Genotypingを行うことによって系統維持が可能であることを示すだけではなく、運動失調を未発症の段階で神経細胞に何が起こって、変性が起こり始めるのかを解析することが可能となった。 鉄代謝関連遺伝子では、homo個体でWtやheteroと異なる発現傾向を示すものが見つかってきており、これらの発現調節と鉄沈着あるいは運動失調発症との関連を解析していく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の初頭には、Wt確定マウス、hetero確定マウス、運動失調発症マウスの雌雄、全10個体における、運動失調発症と強い連鎖が疑われる約10Mbpsの遺伝子領域のゲノム解析が終了する予定である。それらの結果をマウスのリファレンス配列と比較検討することによって、遺伝子変異部位を抽出し、その中から運動失調の発症や鉄沈着に関わる疾患関連候補遺伝子を選択する。Wtあるいは正常マウスではこれらの遺伝子が発現しているが、運動失調マウスでは発現が正常に起こらないために神経の変性が生じていると考えられる。そこで、これらの疾患関連候補遺伝子について、まず生後8日以前のWtあるいは正常マウスの三叉神経、脊髄神経に発現しているかをin situ hybridizationおよびPCR法にて確認し、またタンパク質をコーディングしている場合には免疫組織化学を併用して、スクリーニングを行っていく。また、変異の状態よっては異常なRNAが生成されている可能性もあるので、その場合には、異常RNAを同様にin situ hybridizationとPCR法にて確認する。さらに、鉄沈着が生じる前の腎臓においても同様の検討を行うことで、発症原因遺伝子を絞り込むことが可能であろうと考える。
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