2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22310123
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
細田 文恵 独立行政法人国立がん研究センター, 研究所, ユニット長 (30219191)
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Keywords | 乳癌 / リンパ節転移 / エクソンシークエンス / 遺伝子変異 |
Research Abstract |
[検討内容]次世代シークエンス技術を用いて乳癌の遺伝子異常を探索し、個別化医療実現のための新規治療標的分子または診断マーカーの開発を目指す目的で、前年度に乳癌3症例トリオ(原発腫瘍、転移リンパ節腫瘍、非癌リンパ節)の全エクソンシークエンス(ターゲット領域38Mb)を実施した。スプライシング異常やアミノ酸置換を生じる塩基配列変化を、原発腫瘍において56遺伝子に、リンパ節転移腫瘍において107遺伝子に予測した。平成23年度はこれら候補塩基配列変化について、サンガーシークエンス法による検証実験と変異遺伝子の重要性に関する評価を行った。 [結果]アミノ酸変化がタンパク質構造に与える影響を予測するプログラム(PolyPhen,Panther)を使用し、74変異が遺伝子に大きなダメージを与えると予測された。サンガー法によって25遺伝子変異を確認したが、59遺伝子変異は確認されなかった。パイロット実験のためシークエンス読み取り数深度が不足しているために予測精度は低いが、11年経過後メタノール固定パラフィン包埋標本をDNAソースとして用いても次世代シークエンス技術に適用可能であることを確認した。また原発腫瘍特異的遺伝子変異7個、リンパ節転移腫瘍特異的遺伝子変異4個、両者に共通する遺伝子変異4個を同定した。[意義と重要性]リンパ節転移は乳癌の予後不良と強く相関する。リンパ節転移腫瘍特異的遺伝子変異について、多検体を用いた頻度観測を部分的に実施し(32検体)、recurrentに変異を検出する遺伝子を見出した。微量アーカイブDNA試料を用いてのエクソンシークエンスに実績を得たので、リンパ節転移に関わる遺伝子変異の特異性や共通性を詳細解析する目的で、平成24年度には追加12症例トリオのエクソンシークエンス解析を行なう計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
乳癌の個別化医療実現のための遺伝子変異解析対象として、計画当初トリプルネガティブ乳癌や抗癌剤の奏効性に違いがある乳癌を含めて考えていた。トリプルネガティブ乳癌については3症例ペアのエクソンシークエンスを実施済みであるが、シークエンスデータの解析が終了していない。また、・リンパ節転移症例の解析によって乳癌のリンパ節転移能獲得に関する新しい知見が得られつつあるために、現在こちらの解析研究に注力しており、抗癌剤の奏効性に違いがある乳癌症例の解析は未実施である。当初計画と少し方向性を変えて研究を実施している形になっているが、乳癌の重要な予後不良マーカーであるリンパ節転移に関する研究は乳癌の個別化医療実現のための重要な研究の一つであると考え実施している。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のとおり、乳癌の個別化医療実現のための遺伝子変異解析対象として、現在主にリンパ節転移症例を用いて実施している。リンパ節転移症例は多数検体を収集しやすく、.検証実験や症例検討など評価を行ないやすい利点がある。また乳癌の原発腫瘍とリンパ節転移腫瘍では腫瘍としての性質や臨床的ふるまい(術前化学療法の効果)が異なるケースも知られており、両者の遺伝子変異比較が個別化医療実現のための重要な知見となる可能性が高いと考えられるため、今後もこの方針で研究を推進していきたい。
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Research Products
(2 results)