2011 Fiscal Year Annual Research Report
細胞分化過程の解明のための遺伝子ネットワーク解析技術の開発
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22310125
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松田 秀雄 大阪大学, 大学院・情報科学研究科, 教授 (50183950)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹中 要一 大阪大学, 大学院・情報科学研究科, 准教授 (00324830)
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Keywords | 遺伝子ネットワーク / ベイジアンネットワーク / 遺伝子発現解析 / バイオインフォマティクス |
Research Abstract |
本研究は、細胞分化の過程での遺伝子ネットワークの構造変化とそれを制御する遺伝子を検出することで、細胞分化の機構を説明できる数理モデルを作成することを研究目的としている。本年度は次の研究を実施した。 1.細胞分化の制御遺伝子の探索および数理モデルの作成 複数の細胞分化系列にまたがるクロストーク遺伝子を表現するための数理モデルを作成し、実際にマウスの脂肪細胞・骨芽細胞それぞれの分化の時系列発現プロファイルにそのモデルを適用することで、クロストーク遺伝子を探索した。その研究成果について論文発表を行った(吉澤,2011)。また、遺伝子制御ネットワークの推定手法で、可能な候補ネットワークの中からより精度の高いネットワークを探索する手法として、免疫アルゴリズムによる探索手法(Nakayama,2011)と、ベイジアンネットワークにおいて3遺伝子からなる部分ネットワークを探索しその結果を組み合わせてより大きなネットワークを探索する手法(Watanabe,2012)を開発し、それぞれ論文発表を行った。 2.全体処理の並列実行パイプライン化 昨年度に開発した動的シードベイジアンネットワークによるネットワーク推定で、特に大規模な統計的サンプリングによる高精度のネットワーク推定を、マルチCPU・マルチコアの計算サーバを多数利用する並列実行パイプラインを構築し、処理時間の大幅な短縮を図った。このパイプラインでは、多数のCPUおよびコアを使って並列化効率を上げるため、動的な負荷分散を行うスケジューラを備えている。実際にマウスの脂肪細胞分化での遺伝子制御ネットワークの推定を、「京」コンピュータの試験利用を使って実施した結果、12,228CPU(97,824コア)での実行において97%と極めて高い並列化効率を達成した。この研究成果について学会発表を行った(松田,2012)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
細胞分化クロストークの数理モデルの作成と、それによるクロストーク遺伝子の探索の研究成果が認められ、情報処理学会山下記念研究賞を受賞した。また、ベイジアンネットワークにおいて部分ネットワークの探索結果を統合して精度の高いネットワークを推定する手法についての論文発表は、国際会議APBC2012において高い評価を得てBest Paper Awardを受賞した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度までに得られた、細胞分化過程での遺伝子ネットワークの推定結果を、時系列発現プロファイルとの照合により時間軸上に写像し、細胞分化での遺伝子ネットワークの構造変化を解析することで、分化過程を表現する数理モデルのさらなる詳細化・精密化を図る。これにより、分化能の消失時期を推定や、細胞のリプログラミングに対する知見を得る。 また、マルチCPU・マルチコアの計算サーバを利用する並列実行パイプラインの、さらなる大規模並列化による効率化を達成する。 以上の研究成果を、最終年度である平成24年度の成果報告として取りまとめる。
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Research Products
(10 results)