2011 Fiscal Year Annual Research Report
メナキノン新規生合成経路をターゲットとした抗ピロリ菌剤の開発
Project/Area Number |
22310139
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大利 徹 北海道大学, 大学院・工学研究院, 教授 (70264679)
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Keywords | メナキノン / フタロシン / 生合成 / Radical SAM / 阻害剤 / ピロリ菌 |
Research Abstract |
メナキノンは、微生物にとって電子伝達系成分として生育に必須である。筆者は、ピロリ菌などの病原微生物や放線菌などでは、メナキノンが今まで知られていた経路とは全く異なるフタロシン(FL)経路で生合成されることを見出し、その概略を明らかにしたが、初発反応であるFL(ピロリ菌などでは、アミノ体のFL)の生成機構は不明であることから解析を行った。これまでに初発反応に必須な酵素としてMqnA酵素を見出しているが、初発反応がコリスミ酸、フォスフォエノールピルビン酸、イノシン(アデニン)と3つの基質を縮合する複雑な反応であることから、更なる酵素の関与が推定されたため、その同定を試みた。ゲノムデータベースを探索すると、放線菌Acidothermus cellulolyticusやStreptomyces coelicolorでは、メナキノン新規生合成経路に関与する遺伝子群が染色体上で2-3か所にクラスターを成している。両株では、クラスター内に何れも機能未知とされるRadical SAM酵素を含んでいる。通常、クラスター内には関連遺伝子が含まれることから本遺伝子の破壊を試みた。両放線菌では、Radical SAM酵素遺伝子が、何れも他の遺伝子群とポリシストロニックに転写されると推定され、Radical SAM酵素遺伝子の破壊が下流遺伝子の発現に影響を及ぼす恐れがあることから、本遺伝子オーソログが単独で転写される微生物をゲノムデータベースに探索した結果、Thermus thermophilusが目的株であることが分かった。そこで本株を用いて遺伝子破壊を行った結果、破壊株はメナキノン要求性を示し、さらに生育がFLの添加で回復したことから、本Radical SAM酵素が初発反応に関与することが明らかになった。 天然物からの抗ピロリ菌リード化合物の探索も継続した。最初に、2種類のBacillus属細菌を用いた系で一次スクリーニングを行った。同じBacillus属に属しながら、Bacillus haloduransがメナキノン生合成の際、新規経路を使うのに対し、Bacillus subtilisは既知経路を使う。そこで、前者に対してのみ抗菌作用を示す化合物を放線菌・カビの培養液中に探索した。その結果、新たに2つの候補化合物を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
未解明である初発反応に関して、既知のMqnA酵素に加え、Radical SAM酵素も関与することを明らかにした。阻害剤の探索も順調に推移している。
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Strategy for Future Research Activity |
今回用いた手法で、クラスター内の機能未知遺伝子がさらに初発反応に関与するか検討する。また、初発反応にRadical SAM酵素が関与することが明らかになったので、本酵素の機能解析も行う。しかし、Radical SAM酵素は酸素感受性であり、in vitroの実験は酵素調製から反応に至るまで完全嫌気の条件で行う必要がる。設備的に本実験は困難であることから、最初に大腸菌などを用いた異種宿主発現により検討する。具体的には、MqnAとRadical SAM酵素遺伝子を大腸菌で発現させFLが生成するか検討する。 阻害剤に関しては、候補化合物の精製・構造解析を行う。さらにスクリーニングも継続する。
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