2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22310140
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
井本 正哉 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (60213253)
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Keywords | ケミカルバイオロジー / パーキンソン症 / がん / α-synuclein / 5-リポキシゲナーゼ / 細胞遊走 |
Research Abstract |
本申請課題では難治性疾患のうち「パーキンソン病」と「がん」に焦点を絞り,申請者らが開発した小分子化合物を用いて,その標的タンパク質の同定および作用機構解析を明らかにすることを目的とする. 1)パーキンソン症:これまでまでにパーキンソンモデル細胞系であるラット副髄腎質褐色細胞腫PC12D細胞内にMPP+を添加させるとα-synucleinの凝集からなる斑点が形成されることを見いだし,この斑点を阻害する化合物をスクリーニングしてSO286を見いだした.この機構を解析した結果,SO286を添加するとオートリソソーム形成が促進されα-synucleinの凝集が分解され,その結果細胞死が抑制されることを明らかにした.そこでSO286固定化ビーズを用いたプルダウン法によりSO286の結合タンパク質を取得するための種々条件検討を行った.細胞抽出液とSO286固定化ビーズとの反応時間,反応溶液中の界面活性剤等の条件検討を行ったがSO286ビーズ選択的に結合するタンパク質は得られなかった.そこでSO286の活性に影響を与えない部位にビオチンを付加したビオチン化SO286を用いた標的タンパク質の同定を試みている. 2)がん転移:ヒト扁平上皮がん細胞A431細胞においてEGF依存的細胞遊走を5-リポキシゲナーゼ阻害剤が抑制した.これまでにEGFによる細胞遊走にはRac1の活性化及びRac1GEFであるTiam1の発現上昇が必須であることが見出した.さらにTiam1はEGF刺激によって転写が活性化する一方で,翻訳ご修飾によってもその発現量が変化することも見いだしている.そこで,ロイコトリエンシグナルによってTiam1プロモーター領域に結合する転写因子を明らかにし,さらに細胞内情報伝達系阻害剤を用いて転写因子を活性化させるシグナル伝達機構を明らかにする.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
パーキンソンモデル細胞でのSO286の細胞生物学手法による作用機構解析やがん細胞の遊走機構におけるCysLT1シグナリングの重要さを示す結果な当初の計画以上に進んでいるが,反面,SO286の標的分子同定については更に結合条件検討等を行う必要がある.
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Strategy for Future Research Activity |
1)パーキンソン症:SO286の誘導体に対してα-synuclein凝集阻害活性評価を行ない,構造活性相関解析をすることでSO286の活性部位を特定する.さらにSO286ビオチン体を用いて標的タンパク質の同定および機能解析を行なう. 2)がん転移:EGFによる細胞遊走にはRac1GEFであるTiam1の発現上昇が必須であることが見出されてきた.さらにTiam1はEGF刺激によって転写が活性化することからロイコトリエンシグナルによってTiam1プロモーター領域に結合する転写因子を明らかにし,さらに細胞内情報伝達系阻害剤を用いて転写因子を活性化させるシグナル伝達機構を明らかにする。
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