2012 Fiscal Year Annual Research Report
地域との協働と空間モデルによる淡水生態系衰退の複合影響要因と適応策に関する研究
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22310143
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鷲谷 いづみ 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (40191738)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 潤 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (30420227)
西原 昇吾 東京大学, 農学生命科学研究科, 研究員 (90569625)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 淡水魚類 / 二枚貝 / 複合影響 / 侵略的外来種 / 氾濫原ハビタット |
Research Abstract |
(1)北海道朱太川水系において、ヤマメによるカワシンジュガイのグロキジウム幼生の分散パターンを把握するため、ヤマメの標識再捕獲調査(流呈方向の分散パターンの把握)および定置網調査(支流への分散パターンの把握)を行った。その結果、グロキジウム幼生がヤマメへ寄生している間、ヤマメは上流方向へ偏った分散を行っていること、さらにヤマメはより水温の低い支流へ頻繁に分散していることが明らかとなった。また、カワシンジュガイの繁殖成功に関するデータを取得し、現在解析中である。 (2)岩手県久保川流域では、生物多様性の高い120の池でトラップ550個を設置し、地域と協働で4月~12月の毎週の排除が実施された。その結果、ウシガエル幼生12207頭、成体♂266頭、成体♀211頭、新成体2660頭、卵塊1個が捕獲された。中でも、保全上重要な水生生物が残存し侵入の最前線となる地域で集中的に排除を実施した結果、個体群の大幅な縮小がみられた。福井県三方湖流域でも、トラップ22個を毎週2回ずつ用いた排除を開始し、新成体と成体あわせて340頭を排除した。 (3)博物館標本および魚類相図鑑を用いた聞き取り調査から、過去の朱太川水系の魚類相の再構築を試みたところ、氾濫原湿地の減少にともなう止水性魚類の生息量が急減あるいは個体群絶滅が支持される結果が得られた。魚類像図鑑は聞き取り調査および黒松内町の3つの小中学校の総合学習に活用され、魚類相図鑑を用いたモニタリング手法の可能性が確認された。また、朱太川水系の一時的水域における魚類群集の解析結果から、その魚類相はネスト構造を示し、下流域の面積が大きく水深の深い水域で種多様性が高いことが明らかとなった。また、カワヤツメ、スナヤツメ、シマウキゴリの3種が一時的水域の指標種として抽出された。以上の結果に基づき、朱太川水系の魚類相の保全・再生の方法について整理した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
魚類と二枚貝との関係について、予定通り野外調査・データ解析を実施した。また、侵略的外来種の駆除実験とその効果の検証について、地域と連携し、予定通り駆除・調査を実施した。さらに、連続性のある氾濫原ハビタットの再生に向けて、魚類図鑑を用いた環境学習会および聞き取り調査を実施し、魚類図鑑を用いたモニタリングの可能性を確認した。また、この調査結果とこれまでの魚類相の調査データの解析結果を元に、朱太川水系の魚類相の保全・再生方法について整理した。
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Strategy for Future Research Activity |
カワシンジュガイのメタ個体群構造と水系ネットワークとの関係ついて、これまで取得した分布・環境データをもとに、空間生態モデルの高度化を図るとともに、4年間の研究成果にもとづき保全指針をまとめる。また、地域との協働により継続してきたウシガエル駆除および生き物調査データの解析結果をもとに、地域との協働による外来種駆除の指針をまとめ、具体的な提案を行う。さらに、地域との協働による氾濫原ハビタット再生に向けた指針をまとめる。
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Research Products
(22 results)