2012 Fiscal Year Annual Research Report
ミクロ環境史の復元手法による北極圏における温暖化の先住民社会への影響分析
Project/Area Number |
22310148
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高倉 浩樹 東北大学, 東北アジア研究センター, 准教授 (00305400)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥村 誠 東北大学, 災害科学国際研究所, 教授 (00194514)
渡邉 学 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙利用ミッション本部, 主任研究員 (10371147)
久保田 亮 立教女学院短期大学, 英語科, 講師 (80466515)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 北極圏 / アイスジャム洪水 / 先住民 / リモートセンシング / 河川工学 / 在来知 / 気候変動 |
Research Abstract |
今年度は人類学的フィールドワークによるデータ収集を行うとともに、人類学調査結果と衛星画像分析の組み合わせを本格的におこなった。具体的には、 #1.アラスカおよびカナダ極北圏における人類学調査を本格的に行い、シベリアとの比較可能なデータの収集。特にカナダ・ユーコン準州における先住社会の事例研究において展開があった。洪水の事例報告があり、春の雪融け洪水の実態と、先住民カスカの人々の対応を明らかにした。この中でカスカの人々にとっての洪水が、定住化や気候変動に伴い、比較的最近になって対応を迫られるようになった現象であることが指摘され、一方で伝統的な野外生活の知識や技術を使いながら対応している様子が示された。さらにユーコン先住民の5つの言語グループにおける水に纏わる語彙の分析をすることで、雪や氷に関する多様な表現がある一方洪水を示す単語は単独ではないなど、先住民の水に関する認識を明かすための指標となることが示唆された。#2. シベリアのサハ人社会における春季洪水にたいする在来知に関わる論文を執筆と補足的調査については在来知と環境適応について論文を執筆した。また9月に現地調査を実施し川の中州利用についての民族誌情報を収集した。#3.現地新聞記事の情報を報告としてまとめると共に、春洪水の進捗状況を衛星画像分析と対比する事で、洪水の特徴を人類学・リモートセンシング・河川工学の学際的分析結果として国際学会で発表した。について分析。#4. 土木計画学分野は、河川の凍結と融解についての物理的メカニズムを北極圏での調査にどのように応用できるか検討し、国内河川の事例でモデル化に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度まですすんできた学際的な洪水と地域社会への影響については着々とその成果が刊行された。とくに学際的分析は、2013年1月15日に東京・科学未来館でおこなわれた第三回国際北極研究シンポジウムにおいて、高倉を筆頭に共同研究メンバーの吉川泰弘、渡邉学ほかの共著として、「Ice movement in the Lena River and the typology of spring flooding: An interpretation of local sources integrated with satellite imagery using a multidisciplinary approach」で報告された。これによって近年のレナ川のアイスジャム洪水における流氷の動態と洪水の相関関係、および氾濫原の地域社会による土地利用と洪水の影響を解明することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は最終年度にむけて、まだ十分成果がでていないアラスカ先住民社会の事例について明らかにすると共に、北米とシベリアを比較し検討することを試みる。またこれまで研究協力者として調査にかかわってもらったカナダの事例がシベリアと対比できることが明らかになりつつあるので、この点についても補足調査を行う。
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