2013 Fiscal Year Annual Research Report
ミクロ環境史の復元手法による北極圏における温暖化の先住民社会への影響分析
Project/Area Number |
22310148
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高倉 浩樹 東北大学, 東北アジア研究センター, 教授 (00305400)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥村 誠 東北大学, 災害科学国際研究所, 教授 (00194514)
渡邉 学 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙利用ミッション本部, 主任研究員 (10371147)
久保田 亮 大分大学, 経済学部, 准教授 (80466515)
山口 未花子 北九州市立大学, 地域共生教育センター, 特任講師 (60507151)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 北極圏 / 気候変動 / 先住民 / 在来知 / リモートセンシング / 河川工学 |
Research Abstract |
今年度は、最終年度として、人類学調査結果と衛星画像分析などによる文理融合研究の成果取りまとめを行うとともに、シベリアと北米の地域間比較を行い、地球温暖化が北極圏先住民社会に及ぼす影響について総括を行った。 成果の一つは、事例の一つであるレナ川中流域の解氷洪水の現象を全球と局所の関係性を踏まえ解明したことである。北極増振による地球レベルの積雪・水文プロセスと同期する形で、レナ川中流域は湿潤化が進んでおり、それが近年のレナ川の洪水現象に寄与している。しかし地域住民社会への影響は、単に水害という形では現れない。地域のサハ人社会は、解氷と短期間の水量増加に基づく河川氾濫原の生態活性化を前提にした生業文化を形成し、近年の洪水増加は社会に悪影響を及ぼしていなかった。しかし湿潤化は解氷洪水の後に発生する融雪洪水、夏の降雨洪水の増加にも寄与し、これは土泥を含む水量増加が長期化することで草地の成育に悪影響を及ぼし、それが地域社会の適応の限界を生み出していることが判明した。 一方、北米との調査からは、シベリアとは逆に乾燥化が進んでおり、洪水は減少しあっても部分的な現象であった。アラスカ先住民やカナダ先住民の場合、そもそも氾濫原資源を利用しない生業適応が特徴であった。北米とシベリアの比較から分かったのは、先住民社会にあって狩猟採集などの動物資源に依存する生業適応の場合、1960年代以降の定住化政策の結果、部分的には適応の限界が見られる場合もあるが、全体として現時点での気候変動=温暖化には十分対処していることである。しかし河川氾濫原の植物資源利用する生業の場合、温暖化は住民社会に大きな影響を与えつつある。言い換えれば人間の自然利用において、家畜動物などを通して、人間が直接摂取不可能な資源を利用する場面において、人間社会の脆弱性が顕在化するということになる。
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Current Status of Research Progress |
Reason
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(10 results)