2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22320021
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
杉浦 秀一 北海道大学, 大学院・メディア・コミュニケーション研究院, 教授 (50196713)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
兎内 勇津流 北海道大学, スラブ研究センター, 准教授 (50271672)
根村 亮 新潟工科大学, 工学部, 教授 (40242367)
下里 俊行 上越教育大学, 学校教育研究科, 教授 (80262393)
貝澤 哉 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (30247267)
北見 諭 神戸市外国語大学, 外国語学部, 准教授 (00298118)
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Keywords | プラトニズム / ロシア / 文化統合機能 / プラトン / フィラレート / ナデージュヂン / トルベツコイ / ローセフ |
Research Abstract |
本研究の課題として、(1)19世紀から20世紀初頭にかけてのロシアにおけるプラトニズムの解釈動向とその影響、(2)様々な文化現象において顕現しているプラトニズムの統合的機能についての分析がなされた。その結果、(1)について、兎内によりロシア正教神学者のフィラレート(ドロズドフ)の東西教会の教義の相違についての意見書の内容、さらに彼の検閲者としての側面が解明された。下里によりライプニッツ=ヴォルフ派、ゴルビンスキイにおける時間論との対比の中でナデージュヂンにおけるプラトン的時間概念の特質が解明された。杉浦によりソロヴィヨフの「遺産」争奪の文脈の中にE.トルベツコイ『ウラジーミル・ソロヴィヨフの世界観』が位置づけられ、彼の「終末の哲学」とソロヴィヨフ思想の核心との相反関係が指摘された。貝澤によりA.ローセフ『名の哲学』(1927)の構造と特質がプラトニズムを軸にしてフッサール現象法、解釈学、弁証法との関連で分析された。また、(2)について、坂庭によりスタンケーヴィチの「洞窟の壁に映った影」の表象分析がなされ、トム・ストッパードの戯曲『コースト・オブ・ユートピア』に提示されたスタンケーヴィチ像との関連性が明らかにされた。研究協力者・渡辺圭氏によりA.II.チェーホフの短編『学生』が福音書の視点から分され、従来の作家理解とは異なる側面が指摘された。 今後、プラトニズムと19世紀後半以降のオカルティズム潮流、20世紀初頭の宗教哲学、象徴主義派文学、社会変革理論との関連について解明し、近現代のロシア政治思想の分析のための分析枠組を開発するという課題が浮き彫りになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画ではロシア文化史におけるプラトニズムの影響について、(A)19世紀前半、(B)大改革時代、(C)1880年代以降の哲学思想、(D)20世紀初頭までの文化運動の4つの領域で分析する予定であった。結果として、(B)の分野に関して若干、遅滞しているとはいえ、(A)および(D)の分野で著しい研究成果が出ている。以上の事情を綜合的に判断すれば、全体として順調に研究が進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、集中的に解明すべき分野は以下の通りである。1840-50年代の神学および哲学思想におけるプラトン理解、特にスラブ派と西欧派のプラトン観の再検討、1860-70年代のロシア実証主義におけるプラトニズムの影響、特に大学・神学大学の哲学教授と初期ソロヴィヨフとの関係、文学作品・文芸批評でのプラトニズムの影響の精査、1880年代以降の法哲学におけるプラトニズム、オカルティズムとの関連、トルベツコーイ兄弟、ロースキイ、カルサーヴィンにおけるプラトニズム的要素の解析、20世紀初頭のポスト・ソロヴィヨフ的思想動向とプラトニズムとの関連、マルクス主義、正教神学との関連など。以上の比較的未開拓の分野について一定の分析を加えた後に、19世初頭から20世紀初頭にいたるまでのプラトニズム的要素の帰趨についての大きな見取り図を描き出し、最終年度に向かって、空白研究分野を析出することが大きな課題である。
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Research Products
(6 results)