2012 Fiscal Year Annual Research Report
日本現存福州版大蔵経の版刻・舶載・受容展開・保管に関する総合的な基礎研究
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22320052
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Research Institution | Jissen Women's University |
Principal Investigator |
牧野 和夫 実践女子大学, 文学部, 教授 (70123081)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 悠介 神奈川県立金沢文庫, その他部局等, 研究員 (40551502)
野沢 佳美 立正大学, 文学部, 教授 (80277748)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 宋版 / 泉涌寺版 / 日本中世説話文学 / 日本中世史 / 書誌学 / 日中交流史 / 福州版大蔵経 |
Research Abstract |
当該年度に実施した研究の成果を記すならば、前年度に引き続き日本各地の現存福州版大蔵経を訪ね、版本の基本的な識別基準「刊・印・修」に関する詳細な調査を継続した。その意義・重要性については、新しい事実関係などに及ぶものであり、一端は既に口頭発表で示した。24年度においても、基本的には初年度よりの継続として、以下の研究計画・方法で行った。 1研究会の開催:今年度は本科研主催による研究会は開催せず、平成24年12月25日(立正大学大崎校舎)、平成25年3月2・3日(立命館大学 洋々館)開催の国文学研究資料館特定研究班主催の第一・二回宋版研究会に参加し代表者・分担者が調査成果を発表した。また、早稲田大学日本宗教文化研究所他主催(国際交流基金後援)国際シンポジウムなどにおいても発表を行った。 2知恩院・醍醐寺などの継続的な調査:醍醐寺について8月19日~20日(参加者:中村一紀・高橋悠介・舩田淳一・牧野和夫)。知恩院については、9月11~13日(参加者:野沢佳美・中村・陳捷・舩田・森誠子・牧野)。醍醐寺・知恩院の調査においては、帙表紙の有無・原態か旧補か、毎板の版心の位置、印面状態の良し悪しなどの書誌的項目に留意した詳細な記述を心掛けた。宗像大社については、11月11~12日(参加者:河窪奈津子・中村・森・牧野)。23年度に引き続き、書写一切経と、底本の宋版大蔵経との同異を検討、前回の調査と同様に、従来の報告書に未記載の書写底本の刊記・印造記などが多く発見。 3その他、24年6月4~5日(参加者:中村・牧野・森)、泉涌寺所蔵の宋版・泉涌寺版の継続調査を行い終了。牧野個人で行った調査としては、24年8月28~29日の増上寺、25年2月8日・3月13~14日の神奈川県立金沢文庫、などの調査がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的の重要な一つであった日本舶載現存の福州版大蔵経の各蔵の刷印時期、その先後を、一年以上早く確定でき、今年度より想定していた刻工名の検討準備にも着手できたことが成果としては大きい。調査は概ね順調であるが、知恩院蔵大蔵経は修復作業中にて当初の計画を修正し、調査を継続する。 本源寺蔵大蔵経については、次年度を目途に刻工名ほかを軸にした現存目録刊行の計画を終了し、諸方面との交渉を始める予定であるが、その検討会などを二回ほど開き、既に着手しており、順調に進捗している。そのための補充調査も第一回目を終え、課題などの検討を整理して第二回目に向けた準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は24年度までに得た成果を更に深化し、統一的な書誌事項の記述を目指し、調査を継続する。24年度以降は、福州版大蔵経の裾野として展開する他の宋版仏書へ調査の対象を広げることが必要となる。宋版律三大部・注疏記類をモデルケースとして着手する予定である。 「刊・印・修」の実態を明らかにするため、「入れ木」・「墨丁」「追彫」などの部分的修補の詳細な比較研究を可能にすべく更なる工夫を盛った調書の作成を目指す。併行して本源寺蔵大蔵経の作成済み調書を入力し刻工名調査の基礎資料を作成、近く目録を公刊予定で、その準備に着手し進行中であるが、一層の進展を図る。その過程で混合帖などの事例が豊富になってきた点で新たな調査の拡充と深化が必須となってきた。また、保存に関する初期段階の基本的な処置が施されていない蔵経は、調査過程における緊急な対策として中性紙製の封筒への封入作業が同時並行して行われなければならないと判断せざるを得ない。今後の計画の遂行には一層の時日を必要とすることが明瞭になってきた。
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Research Products
(5 results)