2010 Fiscal Year Annual Research Report
ブレイクの複合芸術における「血」――医学的、ジェンダー的研究
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22320057
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
今泉 容子 筑波大学, 大学院・人文社会科学研究科, 教授 (40151667)
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Keywords | ブレイク / 彩飾詩 / 血 / 医学 / エロチカ文学 / 複合芸術 / イギリス18世紀 / ジェンダー |
Research Abstract |
本研究が対象とするのは、イギリス・ロマン主義期の詩人・画家・彫版画師ウィリアム・ブレイク(William Blake)の「彩飾詩」(Illuminated Poetry)とよばれる複合芸術の全作品である。研究目的は、彼の作品に頻出する「血」の意味を、18世紀の医学的ディスコースに関連づけながら、また同時代のエロチカ文学(大衆文学)における「血」の描写と比較しながら、解明することである。本研究の独創的な点は、ブレイク作品に描かれた「血」の意味が「変化していくプロセス」を明らかにして、従来のブレイク研究ではすっぽりと抜け落ちていた「セクシュアルな血」の存在を明らかにするところにある。 初年度である本年度は、まず彩飾詩とよばれる手づくりの複合芸術作品(ブレイクのオリジナル)を分析することから、研究を開始した。具体的に言えば、ブレイクの「血」の表象が出てくるシーンを検出し、そのデータを収集・分類したのである。ブレイクの彩飾詩は、詩と絵が合体した作品であるため、(1)「血」が出現する「詩」と、(2)「血」の形や色が出現する「絵」の双方を、初期作品から後期作品にいたるまで検出していったのである。 これらの検出したシーン群における「血」の意味を、18世紀の医学的、ジェンダー的ディスコースにおける「血」の解釈と照らし合わせながら、明らかにしていく作業は、2年度目に予定されている。連携研究者たちと意見交換しながら、ブレイク独自の「血」の意味を解明したい。
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