2011 Fiscal Year Annual Research Report
ブレイクの複合芸術における「血」――医学的、ジェンダー的研究
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22320057
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
今泉 容子 筑波大学, 人文社会系, 教授 (40151667)
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Keywords | 複合芸術 / ロマン主義 / ウィリアム・ブレイク / 血 / ジェンダー / 医学 / セクシュアリティ / 18世紀 |
Research Abstract |
本研究が対象とするのは、イギリス・ロマン主義期の詩人・画家・彫版画師ウィリアム・ブレイク(William Blake)の「彩飾詩」(Illuminated Poetly)とよばれる複合芸術の全作品である。彼の作品に頻出する「血」の意味を、18世紀の医学的ディスコースに関連づけながら、また同時代のエロチカ文学(大衆文学)における「血」の描写と比較しながら、解明することが、研究目的である。 本研究の意義は、従来のブレイク研究ですっぽりと抜け落ちていた「セクシュアルな血」の存在を明らかにするところにある。大胆で、独特で、複雑に交錯した「セクシュアルな血」は、ブレイクの表象体系の重要な柱のひとつになっているが、アードマンが解明した「社会的な血」の解釈が主流であったため、いまだ研究されていない。その未開拓の領域に切り入るところに、本研究の独創性がみとめられるはずである。 平成23年度には、ブレイクの複合芸術において、ブレイクと医学、ブレイクとエロチカ文学が「血」を接点としてどのように「結びついているか」が、明らかにできた。愚弟的には、「医学的な血」と「ジェンダー的な血」がブレイクの複合芸術作品において、どのように描写されているかを解明できたのである。 そこでは、ブレイクの初期作品から後期作品へ移るにつれて、「血」に込められた意味が「変化していく」ことを明示した。その「変化のプロセス」は、アードマンが主張した「社会的な血」から、本研究が重視する「セクシュアルな血」への変化と言えるものであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画どおりの研究が実施されており、論文も順調に執筆されつつあるため。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度の平成24年度は、成果を公表する予定である。これまでに明らかにできたブレイクの複合芸術における「血」の全貌を、研究成果として公表したい。まず国際会議において口頭発表すること、つぎに論文として出版することが計画されている。
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