2012 Fiscal Year Annual Research Report
モンロー・ドクトリンの行為遂行的効果と21世紀グローバルコミュニティの未来
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22320059
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
下河辺 美知子 成蹊大学, 文学部, 教授 (20171001)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
巽 孝之 慶應義塾大学, 文学部, 教授 (30155098)
舌津 智之 立教大学, 文学部, 教授 (40262216)
日比野 啓 成蹊大学, 文学部, 准教授 (40302830)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | モンロー・ドクトリン / 半球思考 / 惑星思考 / 南米 / 島と大陸 / ミュージカル / 海の文化表象 / 環大西洋 |
Research Abstract |
3年目である本年度は、2年間の研究活動の成果をもとに、共通テーマの方向性についてさらなる検討を加え、最終的成果をどのような形でまとめるかについて検討しつつ研究を進めた。個別のテーマを各自が設定し、半球思考などの視点より、モンロー・ドクトリンという文化事象が惑星思考といった批評とどのように関係し共振するのかについて確認しつつある。共同研究者各自が所属する学会、研究会においての発表をもとに、共通テーマの具体的方向をすりあわせている。また、本プロジェクトの出発点となった『アメリカン・テロル』の続編として『アメリカン・ヴァイオレンス』が出版され、本研究が立体的に発展していることが立証された。 本年度行われた研究会および個人の研究活動は以下の通り。 ①2012年7月30日(月)「植民地を描き足すこと:アメリカ植民地期フィリピン(1901~1941)の地理・歴史教育に見る地理区分の変遷」岡田泰平(成蹊大学)②2012年10月26日(金)ニューヨーク市立大学大学院コロキウム"Disappearing History:Scenes of Trauma in the Theater of Human Rights" キャシー・カルース(コーネル大)③2013年1月27日(月)「自然主義と動物表象」折島正司(青山学院大)ワークショップ 石山愛梨、濟藤葵、高瀬祐子 四人の研究分担者の本年度実績は、論文計12点、図書計11冊、学会発表・招待講演は計17回に上る。また海外の研究活動としては、国際学会発表(下河辺、巽)、国際学会キーノート講演(巽)、国内学会発表・シンポジウム(巽)、PAMLA特別パネル発表(下河辺、巽)、CUNY大学院センターでの研究活動(8月~12月下河辺)、ニューヨークでの資料収集(下河辺、日比野)、シンガポールでの資料収集(舌津)、MLA参加(下河辺)など。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
3年間の研究を終了し、モンロー・ドクトリンのレトリックの文化的、政治的意味についての検証が順調に進んでいる。さらに、モンロー大統領のレトリックがもたらした西半球・東半球という概念が、地球を球体(globe)として見る視点につながり、19世紀アメリカの政治的無意識についての洞察を深め、一方、20世紀のポストコロニアル研究の中での有効な視座を与えることが検証されつつある。国内外の学会にたいする共同研究者4人の活動がそのことを証明していると思われる。"Conversazioni in Italia:Emerson, Hawthorne, and Poe" in Florence,Italy での、環太平洋的視座からの独立革命時のアメリカ的恐怖の研究発表(下河辺)、PAMLA in Seattle での、"Islands and American Culture" をテーマとした惑星的広がりを持つアメリカ大陸観の研究発表(下河辺、巽)など、国際的な発信による実績があがっている。さらに、2013年6月には『モダニズムの惑星』(岩波書店)(巽)出版が確定しており、2013年5月26日には日本英文学会シンポジアにおいて「21世紀世界における惑星的想像力」の企画、司会、発表、コメンテーター(下河辺、巽)として、本プロジェクトの成果の一端が日本の学会にむけて発信されることになっている。
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Strategy for Future Research Activity |
モンロー・ドクトリンの行為遂行的効果の最終検証へむけて4人がこれまでおこなってきた個別の研究をまとめていく予定である。独立まもないアメリカの一大統領が年次教書の中で述べた1,000語にも満たない言葉が、なぜアメリカという国家において、その後3世紀にわたり利用、再利用、再々利用されてきたのかを論じることで、アメリカ国家がグローバル世界の中で占めてきた位置を確認する。この作業を、文学・文化研究という領域から他の領域に向けて発信することが今後の方策の大きな部分である。共同研究者を中心としてこのテーマを扱う本を出版する予定を立てている。また、国内・国外へ向けて論文を発表し、学会発表でペーパーを読む予定もすでにいくつか決定している。2013年6月のThe 9th International Melville Conference in Washington DCにおいては、下河辺、巽、舌津の3名が発表予定。また、共同研究者のうちの3名がかかわっているMelville Society of Japan が中心となって2015年にThe 10tn International Melville Conference を日本で開催することも確定しており、研究発表、パネル企画、そして、学会準備という点において、その方向にむけて本プロジェクトを発展させていきたい。4年間のプロジェクト終了に際し、モンロー・ドクトリンというテーマの歴史的有用性を確認するのみでなく、未来にむけて21世紀世界への提言になる可能性についてもなんらかの結論を見いだしたい。
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Research Products
(40 results)