2012 Fiscal Year Annual Research Report
コエ語族ガナグループの系統分類の再検討:シフトかイノベーションか
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22320080
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Research Institution | Reitaku University |
Principal Investigator |
大野 仁美 麗澤大学, 外国語学部, 教授 (70245273)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 言語学 / コイサン / 分類 / 親族名称 / 文法 |
Research Abstract |
この研究は、(1)親族名称体系と(2)文法体系という2つの部門から成り立っている。 (1)親族名称体系研究に関しては、汎コイサン的な特徴であるとされる冗談忌避関係の再検討をおこない、ガナグループにおける再解釈と、それがもつ行動における機能的側面をあきらかにした。また、彼らが実施するcomposite marriageが、ガナグループにおける特異な親族名称体系に論理的な破綻なく組み込まれていることを詳細に議論した。これらについては研究発表を実施したが、内容を再編成して論文を現在作成中である。 コエ語族全体では、近年調査によって明らかになった最新の資料も組み入れて、親族名称の比較を進めた. (2)文法研究に関しては、収集したナラティブテキストのトランスクリプションを進めた。そのうち、グイ語の分析的なTAMについて、まず時制の小詞がナラティブでどのように出現するかについての初期報告をおこなった。これをもとに、調査対象項目および言語、テキストの種類をさらに拡大してホアン語との比較へと進める予定である。 現地調査を実施し、ツェラ語話者集落(クウェネング地区)を訪問して、ツェラ語親族名称体系に関する面接調査をおこなった。ボツワナ国の都市部および地方の研究機関や公的な教育機関を訪問し、研究成果を届けるとともに、今後の調査の協同的な進め方について情報交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定とくらべ、(1)親族名称体系の比較の範囲が拡大したので、より時間がかかっているのと、その分(2)文法調査および分析が全体的に遅れているという状況である。 (1)は、コエ語に所属する、今まで調査記録のなかったツィハ語およびシュア語の資料など新規データが扱えるようになったので、当初より範囲を拡大したコエ語全体の比較にとりくむことになった。また今年度(2)を進めるために計画していた研究機関(ホアン語研究者)訪問が実現できなかったが、これは来年度実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)親族名称研究に関しては、最終段階であり、論文作成をすすめるので、調査分析に関しては(2)の文法研究が中心となる。全体的な計画の変更はない。 調査の実現性に不安があったクウェネング地区でのツェラ語の調査が実施できる体勢をととのえることができたので、来年度調査を実施し、ガナグループ全体での記述を進められるようになった。それらに関して、グイ語データをもとにして、国際学会やシンポジウムで記述および類型論的な考察を発表しフィードバックを受ける(最終年度を予定)。これらの記述を元に、ホアン語との比較を随時進めていく。当初の予定通り、これらの言語の話し手集団の遺伝子上での分析がすすみ近縁関係が公表され始めているので、その結果を考慮にいれ系統関係の議論を進める。
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