2011 Fiscal Year Annual Research Report
在日インドネシア人児童生徒の日本語習得と継承言語習得に関する基礎的研究
Project/Area Number |
22320092
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
助川 泰彦 東北大学, 国際交流センター, 教授 (70241560)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吹原 豊 福岡女子大学, 国際文理学部, 講師 (60434403)
|
Keywords | インドネシア人 / 児童生徒 / 日本語習得 / 継承言語 / 第二言語 |
Research Abstract |
第一に、茨城県東茨城郡大洗町在住のインドネシア人児童生徒全数を対象にして、FROG STORYによる日本語能力とインドネシア語能力のデータ収集を行った。FROG STORYは絵だけによって少年とペットの犬とカエルの間におきた出来事を表した絵本で、これに対して日本語およびインドネシア語でストーリーを被験者に語ってもらい、録音、文字化をした上で、語彙や文法能力を測定して定量的なデータを得た。日本語習得の程度はフロッグストーリーの他に簡易OPIも試み、児童生徒の日本語能力を測定した。その結果、言語能力の向上にはクラブ活動への参加、日本人の友人のネットワーク、両親の日本語や日本人に対する心的態度が強く影響していることが窺えた。 第二にインドネシア人児童生徒を受入れている小中学校の取り出し教室担当教諭や保護者に対して聞取り調査を行い、日本語習得の問題と母語維持の問題を取り巻く事情を調査した。新着の児童生徒が多かったため、全数の調査は実施できなかったが、これまでの調査では長期滞在型のインドネシア人児童の中に日本語習得が速く進んでいるものと遅滞の著しいものがいることが分かっている。極端な例では中学校で2年間に渡り取り出し教室に在籍していながら、漢字の学習が遅滞しており国語、社会などの授業に参加できずにいる中学生がいることも分った。移住労働者の児童生徒の中には高校進学者が過去1年で2名いたが、中学校での日本語習得は高校進学にとって非常に重要な要因であり、本研究の意義として最も重要な側面のひとつである。どのような要因でこうした差異が現れるのかを明らかにすることも重要な課題だと考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査協力依頼をした児童生徒の家族および当事者が研究調査に対して非常に協力的であったこと、震災からの復旧が進み、土曜日と日曜日にインドネシア人教会や児童生徒の自宅における調査の実施が可能になったため、おおむね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
学齢期の児童生徒がいる家庭において、両親の日本語能力不足が日本移住第二世代に相当する児童生徒の日本語習得にどのような影響を及ぼしているか、それら児童生徒の継承言語習得の実態と帰国児童のその後のライフコースの実態の2点をめぐって調査を行い、将来ますます多言語多文化社会化する日本社会が取り組むべき教育問題にとってのひとつのモデルケースとして、その実態を正確に記録し、関係諸機関に低減を行うことを目的とする。
|