2011 Fiscal Year Annual Research Report
第二言語習得の研究成果に基づく効果的な英語教授法・指導法の開発
Project/Area Number |
22320101
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
白畑 知彦 静岡大学, 教育学部, 教授 (50206299)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横田 秀樹 金沢学院大学, 文学部, 准教授 (50440590)
坂内 昌紀 福嶋工業高等専門学校, 准教授 (60321387)
柴田 美紀 広島大学, 総合科学研究科, 准教授 (90310961)
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Keywords | 外国語学習 / 明示的指導 / 否定証拠の付与 / 発達段階 / 英語の主語の習得 / 文法指導 |
Research Abstract |
我々の研究テーマは、「第二言語習得の研究成果に基づく効果的な英語教授法・指導法の開発」である。具体的には、明示的な文法指導が効果的な文法項目とそうでない文法項目を実証的に見つけ出し、それらがなぜそのような違いを生じさせているのかを理論的に整理し、その成果を教室で行われている実際の英語教育に活かしていただくよう提案していくことである。 どのような文法項目には明示的な指導が効果的なのかの1つの仮説として、それは第二言語のインプット(つまり、肯定証拠)からだけでは適切な用法に対する十分な情報を得ることができない特性を持つ第二言語の文法項目には有効だということである。つまり、「否定証拠」のある方が、習得がスムーズにいくと考えられる文法項目である。 たとえば、英語の主語の習得がそうである。今年度の調査項目の1つとして、「主語の習得」がある。英語において、動詞の前に来ることができるDPは、意味役割を持つ必要のない主題ではなく、動詞の項となるDPだということを知るには間接否定証拠を利用している可能性もあるが、直接的に誤りを指摘する直接否定証拠が役に立つのではないだろうか、という仮説を立てるに至った。この仮説の検証を行うために実験を実施した。その結果、直接否定証拠は中級以上の学習者には有効であり、仮説を支持する結果となったのだが、初級学習者には有効ではなかった。 以上の事実より、明示的に否定証拠を与える指導は、どのレベルの学習者にも同等に有効とは言えず、いくつかの条件があることが判明した。主語の習得に関しては、ある一定の習熟度に達していない学習者には有効ではないということである。ただし、否定証拠の付与が初級者にも有効な文法項目もあると思われ、それが何かは今後の課題である。 その他、本年度の研究には、所有格(DP's DP)、現在完了形、被害受け身、名詞複数形が含まれる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)に近い(2)というのが自己点検評価である。その理由として、平成23年度は2年目であったが、1年目と同様に、4名全員が毎年一度以上、口頭研究発表をしているからである。さらに、口頭発表の成果をwritten paperにもしており、研究代表者の白畑はその成果の一部を書物としても著している。明示的指導の有効性、そして非有効性についての実験データは着実に蓄積されてきており、さまざまな主張が出てくることになっている。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には平成23年度同様に、縦断的実験を実施していき、習得データを増やしていくのが24年度の研究姿勢である。まだ実験をしていない文法項目が数多く残っており、その中でも今年度は、人称代名詞、関係代名詞、仮定法、前置詞、名詞複数形(23年度からの継続)を対象項目として研究をしていこうと考えている。 「問題点」ということではないのだが、実験の被験者として、これまでは大学生、高専生が主であった。しかし、初級英語学習者である中学生には実際にどのような指導方法が適しているのかも研究対象とすべきであり、中学校とタイアップして、本年度は縦断的研究・実験を行っていこうと考えている。
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