2011 Fiscal Year Annual Research Report
近代市民規範のポリティクス-「社会改良」の複合的メカニズムに関する史的考察-
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22320123
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
樋口 映美 専修大学, 文学部, 教授 (80238287)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
貴堂 嘉之 一橋大学, 社会学研究科, 教授 (70262095)
日暮 美奈子 専修大学, 文学部, 准教授 (30384671)
岩井 淳 静岡大学, 人文学部, 教授 (70201944)
小野 直子 富山大学, 人文学部, 准教授 (00303199)
加藤 千香子 横浜国立大学, 教育人間科学部, 教授 (40202014)
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Keywords | グローバル化 / 社会思想 / 近代秩序 / 人種 / ジェンダー / 移民 / 優生学 |
Research Abstract |
今年度(2年目)の目標として掲げた2点(「社会改良」の考え方の流動性の検証、および「人種」・「移民」などのイシューと「社会改良」との関わりの検証)に関する議論は多岐にわたった。例えば、米国における優生学運動が、中国系などアジア系移民の入国を法的に禁止して国内の白人社会を「改良」する動きと重なるが、1920年代に盛んになった赤ちゃんコンクールや家族コンクールなどは、優生学運動のプラス志向の現象でもあることが判明した。さらに20世紀初頭の米国に社会悪として「発見」された「貧困」は、移民と結びつけられた時期を経て、1910年代には黒人の問題と見なされ、「社会改良」の方策としての人種隔離を促進させる結果となる。日本の戦後復興期(1950年代)における在日朝鮮人をめぐる日本政府の政策論理と社会的動向は、「優生思想」の普及と重なるであろうが、なかでも「北朝鮮帰国事業」は、復興事業と福祉政策との関連で検証していく必要があることも判明した。また、日本近代における部落差別が、モダニティによって作り出された建前上の平等の下にレイシズムとして浮上したと考えられることも明らかとなった。すべての議論をここで紹介することはできないが、「社会改良」とイシューとの絡まりが具体的に検証されたことは大きな収穫である。 資料収集の出張は、予定どおり研究分担者(日暮・小野)2名がそれぞれ実施した。 合同研究会は、専修大学神田キャンパスにおいて6月19日(日)・9月23日(金)・12月18日(目)に予定通り実施し、充実した議論ができた。 国際交流は、米国のUniversity of North Carolina at Chapel Hillにおいて同大学歴史学部との共催で9月9日・10日(金・土)の両日にわたりワークショップを実施し、本研究チームからは7名が参加した。なお、2012年6月に東京で実施する国際シンポジウムの広報のためチラシなど一部作成し、招聘研究者との打ち合わせ.会場設定などの準備は樋口が実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
University of North Carolina at Chapel Hill(アメリカ合衆国)において同大学HistoryDepartmentとの共催で開催されたワークショップに予定通り本研究課題のチームからは7名が参加し英語で研究発表を行い、有意義な議論ができた。また、東京では合同研究会を3回開催し、7名による中間的な研究発表が予定通り実施された。その結果、研究課題の複雑さばかりか、「社会改良」と各イシューとの具体的な絡まりをいかに今後分析整理していくかが重要であるという共通理解をチームの全員で得ることができ、3年目への重要な足がかりが達成されたと考えられる。なお、連携研究者(中野耕太郎・高田馨里)および研究協力者(白川耕一)も十分な研究成果を発表している(「13.研究発表」参照)。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、本研究課題のチームにとって3年目に入り、さらなる議論を高めるために、2つの推進方策を予定している。 1)6月9日には3名のアメリカ人研究者を招聘し、同時通訳を入れて一般公開のシンポジウムを開催する。翌6月10日には、前日の議論を踏まえて少人数のワークショップにより議論を深める。 2)11月には2泊3日の合宿型の合同研究会を東北大学で開催する。その際、本研究課題のチーム全員が各自の研究成果を報告し、議論を重ね、最終的な研究成果の概要を共有する予定である。
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Research Products
(28 results)