2011 Fiscal Year Annual Research Report
エスニック・メディアにおける太平洋戦争と戦後の記憶と記録―東アジアと東南アジア
Project/Area Number |
22320124
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
貴志 俊彦 京都大学, 地域研究統合情報センター, 教授 (10259567)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川島 真 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 准教授 (90301861)
陳 來幸 兵庫県立大学, 経済学部, 教授 (00227357)
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Keywords | メディア史 / エスニック / 金門島 / 広報 / 太平洋戦争 / 戦後 / 東アジア / 帰還者 |
Research Abstract |
本共同研究は、おもに以下3点を課題としている。 (1)戦中、戦後の各地域におけるエスニック・コミュニティの自律性、権力への依存度の比較 (2)エスニック・メディアの生産・流通・販売ルートの特定による地域の相関性 (3)メディア分析を通じた、エスニック・グループ間の状況認識の類似点/相違点 平成23年度の「研究実施計画」に掲げた活動項目に準じて、以下のような実績をあげ、またいくつかの課題を残した。 1.台湾・金門島における資料調査およびワークショップの開催: 2011年12月、研究分担者の川島、陳および連携研究員・北村は、台湾・国立金門大学の江柏〓教授の協力を得て、世界中から収集されつつある金門島出身者の族譜および彼らのコミュニティ・メディアについて調査をおこなった。また、江教授らが実施している東南アジア各地の金門会館聞き取り調査の成果をめぐって意見交流する機会を得た。そのほか、現地では、王家、薛家の村でフィールド調査を実施した。 2.戦後日本の華僑社会に関する史料調査と研究利用の可能性についての検討: 昨年度につづき、終戦前後に在日台湾人が果たした役割に注目するとともに、同時期の中国の租界や居留地の取扱い、華南地方において台湾人が果たした社会経済史的役割について、調査および分析を進めた。陳、北村は、12月に台湾の中央研究院近代史研究所档案館で調査をおこなった。 3.米国資料調査: 7月、連携研究員・小林は、米国による対東アジア・情報活動の展開(メディア制作拠点は沖縄とマニラ)について分析するために渡米し、(1)米国公文書館:国家安全保障会議文書、USCAR文書、国務省文書、USIA文書、(2)国連アーカイブ:国連広報局文書、(3)ニクソン・ライブラリー:ホワイト・ハウス文書の調査を実施し、これら文書についても継続調査の必要が確認された。 4.日本国内におけるエスニック・メディアの調査(+中国帰還者のヒアリング調査): 研究代表者の貴志は、昨年に引き続き、国会図書館憲政資料室、神奈川大学図書館において、戦時期から現代にいたるエスニック・メディア、とくにプランゲ文庫や移民関係資料に含まれている華僑・華人、韓国・朝鮮人などが発行した雑誌、ミニコミについて調査した。さらに、当初の計画外であったが、中国帰還者の組織「大連会」「奉天会」「長春会」などのメンバーに、戦前のメディア体験を聞きとる作業をおこなうことができたことは成果であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」に記載したとおり、年度初頭に作成した「交付申請書」にあげた活動計画は、おおむね順調に達成することができた。幸い、中国帰還者組織との関係ができ、戦前の「外地」「満洲」にいた日本人たちのメディア体験をヒアリング調査する機会を得たことは予想外の成果だった。ただ、インドネシアにおけるワークショップの実施が課題となったが、これらは最終年度に外国人研究者を招聘して、日本でカンファレンスを実施する計画を進めることで合意を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
1)東アジアと東南アジアのエスニック・グループの関係についての究明 2)雑誌、ラジオ、書籍、映画などメディア媒体どうしの相互連関性の分析 3)記憶と記録との相互矛盾についての解決策の模索 4)中国および米国における関連資料調査の継続 5)個別研究の段階から、共同研究としてのまとまりのある成果発表の場の設置 6)共同研究に寄与する外国人研究者の招聘、および総合討論の実施 7)共同研究の総合的な成果を発表する学術雑誌あるいは刊行物の検討
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Research Products
(14 results)