2011 Fiscal Year Annual Research Report
第一次世界戦争と東部欧州周縁地域:新たな「ヨーロッパ危険地帯」の歴史的起源研究
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22320150
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
佐原 哲也 明治大学, 政治経済学部, 教授 (70254125)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前田 弘毅 首都大学東京, 都市教養学部, 准教授 (90374701)
百瀬 亮司 大阪大学, 世界言語研究センター, 助教 (00506389)
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Keywords | 第一次世界大戦 / バルカン戦争 / バルカン半島 / コーカサス / テロリズム / 経済統制 / オスマン帝国 / 民族主義 |
Research Abstract |
本年度はバルカン戦争の再評価に関する研究に大きな成果が得られた。研究代表者は、9月、1月、2月、3月にトルコ、セルビア、ブルガリアの公文書館で資料調査を行った。研究分担者の前田と百瀬はそれぞれグルジア・イランとセルビアで資料調査及び現地研究協力者との打ち合わせを行った。これの結果、バルカン戦争中の民兵の活動に関する重要な資料群が発見された。その分析の結果、民兵が自然発生的民衆運動であったとする定説とは異なり、事前に入念に準備された戦略の一環であり、非正規兵を用いた非戦闘員迫害が国策で行われていたことが明確となった。この成果の一部は、ブルガリア軍が組織した大規模な民兵組織であるマケドニア・トラキア兵団に関する報告の形で、9月にセルビアで行ったワークショップで発表した。更に、これまで知られていなかった民兵組織の国際連携を示唆する証拠も発見された。アルメニア社会主義政党とブルガリア民兵の協力関係やトルコとブルガリアの諜報機関がセルビアで共同謀略活動を行っていたことなどである。より詳細な証拠が確認されれば従来の定説を塗り替える大きな発見となり、次年度以降の継続的な研究課題に浮上した。この他、前年度の成果の一部を5月のユタ大学での国際会議で、第一次世界戦争中の民兵の活動に関する現段階での研究成果を12月のセルビアの国際会議で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、計画通りに国際ワークショップを開催し、研究成果を海外の研究協力者たちと共有することができた。現地調査も計画通り実施できた。中心課題の一つである、戦時動員と民兵の活用については、予想以上に新たな発見があった一方、ギリシアの政情不安からこの国に関する調査に若干の支障が出たことが誤算であった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、ブルガリアとトルコでの調査を重点的に進めてゆく。前年度の調査により、セルビアでの資料の保存状況が予想以上に悪かったことが理由である。セルビアの第一次世界大戦期の資料は占領と戦災によりかなりの部分が破壊されていた。そのため、占領側であったブルガリアの資料によって補完する必要がある。また、トルコは当初計画以上に貴重な資料が閲覧可能な状態にあることが判明し、より多くのエフォートを割く必要が生じたからである。
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Research Products
(8 results)