2012 Fiscal Year Annual Research Report
第一次世界戦争と東部欧州周縁地域:新たな「ヨーロッパ危険地帯」の歴史的起源研究
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22320150
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
佐原 哲也 明治大学, 政治経済学部, 教授 (70254125)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前田 弘毅 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 准教授 (90374701)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 国際研究者交流 |
Research Abstract |
平成24年度中に解明を目指したのは、①軍事行動中に生じた民間人の迫害・攻撃の実態解明、②戦争と戦後処理の過程で生じた住民移動の実態解明の2点であり、①に関しては、Alexander Protogerov and his anti-Serbian activities after the Balkan WarsならびにSecret Collaboration between the IMRO and the Ottoman Special Force on the Eve of First World Warの論文によって、バルカン戦争から第一次世界大戦の時期にかけて、テロリストが民間人に対していかに残虐な行為を行ったのか、その内容と展開の過程を明らかにすることができた。 一方の②に関しては、Persecution, Resistance and Cooperation: Turkish-Bulgarian Relations in the Southern Balkans during the Balkan Warにおいて、バルカン南部のムスリム居住地域における民族浄化の実態について全体像を明らかにしたが、マケドニアとトラキアでの住民移動について、さらに研究を進める必要があることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は第一次世界大戦が南東欧からコーカサスにかけての国々に与えた影響を総合的に分析し、この事件の歴史的意味を問い直すことを目的としている。具体的には、①戦中・戦後の民間人に対する暴力と住民の移動と、②各国の戦時動員体制の比較とそれが社会に与えた影響を主要な対象として検討する。 ①に関してはこれまでの研究を通じて、民間人に対する暴力の実態が明らかになっただけでなく、南東欧からコーカサス各地で発生した暴力の間に、地域を横断して共通した特徴が存在していることを明らかにすることができた。②に関しては、これまでの史料調査によって当初の想定以上の史料が集まっていることから、①で獲得した相互共通性の認識に立って、新たな知見を構築することが見込まれている。 加えて、過去3年間において、サラエヴォ大学(ボスニア)、クルクラーレリ大学(トルコ)、ユタ大学中東研究センター(アメリカ)、中東工科大学(トルコ)、セルビア科学アカデミー歴史研究所、軍事史戦略研究所(以上セルビア)といった海外諸研究機関と共同で国際会議を開催し、研究成果の共有を進めることができた。また、平成25年度には、ソフィア大学(ブルガリア)と共同で国際会議を開催することになっており、現在準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
実証研究をさらに進展させるため、対象諸国の公文書館における史料調査ならびに史料収集を行う。具体的には、ブルガリア公文書館と、トルコ参謀本部所属軍事史専門文書館を利用する許可を得ることができ、両公文書館の文書を中心に研究を推進する。とりわけ後者は、本研究が対象とする地域・時代における軍事史に関するトルコ語文書に関しては世界随一の保管状況を誇り、研究の更なる進展が期待される。 また、今年度に関しては、過去3年間の海外調査・研究の成果を踏まえたうえで、海外の研究協力者と総合的協議を行い、プロジェクト全体の達成内容を確認することも重要である。
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