2011 Fiscal Year Annual Research Report
有明海・八代海沿岸地域における古墳時代首長墓の展開と在地墓制の相関関係の研究
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22320160
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
杉井 健 熊本大学, 文学部, 准教授 (90263178)
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Keywords | 考古学 / 古墳 / 熊本県 / 阿蘇 / 長目塚古墳 / 平原古墳群 / カミノハナ古墳群 / 鉄製品 |
Research Abstract |
1.阿蘇市長目塚古墳1949・1950年調査出土遺物の再整理作業をほぼ終了。 阿蘇神社所蔵および熊本県教委保管の標記資料の再整理作業は昨年度に開始したが、本年度で図化・写真撮影などをほぼ終了した。その結果、前方部石室副葬品は古墳時代中期中葉(Tk216型式期)に位置付けられることがほぼ確定した。今後、データ整理・報告文執筆へと作業を継続する。 2.阿蘇市平原古墳群の測量調査を開始。 阿蘇谷北側の山地部に所在する平原古墳群の測量調査を開始した。今年度は6号墳を中心に測量したが、それは直径30m程の円墳と推定された。また葺石の存在がうかがわれた。なお、8号墳表採の須恵器片から中期後半を中心とする古墳群である可能性が高まったが、それは上述の長目塚古墳の時期にも近い。長目塚古墳が所在する中通古墳群との比較研究への展望が開けたといえる。 3.上天草市カミノハナ古墳群の測量調査を実施。 山間部の阿蘇谷とは対照的な立地をなす天草島嶼部所在のカミノハナ古墳群の測量調査を実施した。以前の科研費によって当古墳群出土遺物の研究を行ったが、今回の測量はそれを補完することとどもに、立地環境がまったく異なる阿蘇谷との比較研究を目指したものでもある。 4.氷川町大野窟古墳の横穴式石室構造を分析。 後期の前方後円墳である大野窟古墳の横穴式石室構造を分析し、九州地域では特異な隅角を明瞭に作り出すものであることを明確に示した。 5.熊本県地域出土鉄製武器・武具に関する情報収集を継続。 所在不明であった玉名市伝左山古墳出土鉄製品の存在が明らかになった点が特筆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究のもっとも大きな課題である長目塚古墳出土遺物の再整理作業が、当初の予定である研究2年目でほぼメドがついた。また、研究2年目において将来も継続調査できる新たなフィールドを構築することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
長目塚古墳出土遺物の報告文作成に着手しつつ、新たなフィールドである平原古墳群の発掘調査を実施する。また、未報告資料の再整理作業実施の可能性をさぐる。熊本県地域には未報告のままとなっている古墳出土資料が大変多く存在するため、そういった資料の掘り起こし作業および再整理作業が考古学研究進展のために今もっとも求められることの1つである。本研究においては、将来そのような活動の中心となる若手研究者との協力関係の強化も模索したい。
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Research Products
(3 results)