2012 Fiscal Year Annual Research Report
グローバル社会における法源論の再検討 -法学概論の書き換え―
Project/Area Number |
22330006
|
Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
小川 浩三 専修大学, 法学部, 教授 (10142671)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
守矢 健一 大阪市立大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (00295677)
新田 一郎 東京大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (40208252)
松本 英実 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (50303102)
溜箭 将之 立教大学, 法学部, 准教授 (70323623)
葛西 康徳 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (80114437)
|
Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 基礎法学 / 民事法学 / 刑事法学 / 公法学 |
Research Abstract |
法源論にの歴史的展開ついては、研究代表者を中心とする通史的な翻訳書「ヨーロッパ史のなかの裁判事例」(7月刊行予定)において、時代による法源の扱い方の変化について具体例を通じた研究を深めた。また、研究代表者はドイツを訪問し、当地の法制史学者と交流を深め、中世教会法における法源論、近代の法学と法源論について、意見交換をした。新田は、イエール大学所蔵の朝河文書の系統的な整理をはじめとした西洋と日本の比較研究を進めた。また、葛西は古代ギリシアにおける立法の問題について、研究を進め5月の研究会で報告した。 比較法の関係では、2012年5月31日京都において、ルイジアナ大学ヴェルナン・パーマーおよび南アフリカ・ステレンボッシュ大学マリウス・デ・ヴァール教授を迎えて、全体研究会を開催し、ミクスト・リーガル・システムと法源論および法学の可能性について、討論を行った。続いて、6月2日比較法学会(京都大学)において、松本を中心とするミニ・シンポジウム「ミクスト・リーガル・システムと日本法」を上記2人の他に、ステレンボッシュ大学ジャック・デュ・プレシス教授も加えて開催した。ミクスト・リーガル・システムについて比較法学会で取り上げられるのは初めてであり、その意味でも反響は大きかった。 溜箭および守矢は引き続き英米法およびドイツ法の法源論について個別研究を進め、一部は既に公刊されている。 グローバル化という観点では、葛西を中心とした研究会(9月、3月)において、インド法およびオランダ法の歴史について報告を受け、討論した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、一方で法源論を歴史的および比較法的に原理的に考察するとともに、他方で実定法学者と協力して現在の法源の機能を探り、全体として新たな法源論を確立し、それを元に法学概論の書き換えを目指している。歴史的・比較法的研究では従来研究の中心にあった近代の独仏あるいは英米だけでなく、古代ギリシアや中世教会あるいは近代のオランダや南アフリカ等に目を向けることによって、多面的・多層的な法源論を確立しつつある。比較法学会ミニ・シンポジウムはその成果である。 実定法学との協力については、昨年度に研究代表者を中心として、民事法学あるいは公法学を新たな法源論の視角から見る試みがなされた。これは、今後の研究の基礎となりうるものである。さらに、知的財産権法などの先端分野の協力者もえて、そこでの立法、判例、あるいは、いわゆるソフト・ローの研究も視野に入れることができるようになった。 とはいえ、法学概論の書き換えというゴールから見ると、なお研究は途上にある。言語の意味の多様性を承認した上で、テクストに着目して、それを基準とすることで、共通の基盤にのった討論を可能にするという見方を、具体的にわかりやすく提示しなければ、「法学概論」にはならない。具体例を通じたわかりやすいものを精査し、彫琢する努力が意識的になされなければならない。その点ではなお、とりわけ実定法学者との協力がより重要になってくる。従来築き上げた共同研究の体制を、より進化させる必要がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
歴史的および比較法的研究は今後とも進めてゆく。今年度は昨年度の比較法学会の成果を受 けて、小川、松本、葛西、溜箭が南アフリカ法制史学会に参加し、研究交流をより深化させる予定である。なお、ここでは、松本と葛西が報告を予定しており、日本法の比較法的な位置づけについての英語での報告となるものである。 国内での研究会は2度開催する予定である。第1回目は、できるだけ実定法的な課題を中心にして、研究報告および討論を行いたい。基礎法学者の分担者と実定法学者の協力者とがパラレルな報告を行うことによって、法源とりわけテクストのもつ意味を具体的に明らかにすることを目指す。 第2回目の研究会は、最終年度でもあり、全体の総括を行う。とりわけ、「法学概論」の書き換えという課題から、法源論を議論するのに適当な具体的な事例を選別し、それを教育の観点から構成して、モデルを作り上げることを目指す。これを通じて、教科書の骨格にあたる部分を作り上げることを目指す。 本来であれば、教科書の書き換えまで行わなければならないのであるが、法源論の歴史的、比較法的研究に相当の精力を注がざるを得なかったために、そこまでは不可能である。教科書書き換えのための、きちんとした骨格を作り上げることで、次の研究に繋ぎたいと考えている。
|
-
-
-
-
-
-
-
[Book] 尚学社2013
Author(s)
小谷順子
Total Pages
374
Publisher
現代アメリカの司法と憲法――理論的対話の試み
-
-