2011 Fiscal Year Annual Research Report
イギリスにおける実効的で効率的な「行政的正義」実現に向けた構造転換に関する研究
Project/Area Number |
22330014
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
榊原 秀訓 南山大学, 法務研究科, 教授 (00196065)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
深澤 龍一郎 京都大学, 大学院・法学研究科, 准教授 (50362546)
洞澤 秀雄 札幌学院大学, 法学部, 准教授 (60382462)
友岡 史仁 日本大学, 法学部, 准教授 (00366535)
上田 健介 近畿大学, 法務研究科, 教授 (60341046)
長内 祐樹 金沢大学, 法学系, 准教授 (00579617)
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Keywords | 公法学 / 行政法学 / 行政的正義 / 行政救済 / 行政手続 / オンブズマン / 情報公開 / 外部監査 |
Research Abstract |
本年度もほぼ計画通りの研究会開催やイギリス調査を行った。例年、夏合宿の研究会を開催していたが、科研費の支給が明確ではなかったため、結果として研究会開催を見送ることになったことが計画とは異なる点である。ただし、8月の行政法研究フォーラムの開催にあわせて、研究会と打ち合わせを行った。また、10月の公法学会開催にあわせて、イギリス憲法研究会と合同で研究会を開催し、英米諸国における「市民陪審」という参加制度を中心に議論を行った。秋から3月はじめにかけては、代表者・分担者の5名がそれぞれ一週間程度のイギリス調査を行い、コミュニティ・地方政府省等へのヒアリング、オンブズマンに関する会議や市民団体であるパブリック・ロー・プロジェクトの行政救済に関する会議などに参加し、意見交換を行った。さらに、最高裁、高等法院、審判所、地方政府(自治体)の計画委員会などにおいて実際の審理を傍聴し、わが国との審理方式の相違、イギリスの司法改革前後における審理方式の相違等を確認した。年度末の3月には、まとめの研究会を行い、イギリスでの調査や文献研究において得た成果をそれぞれが報告し、情報を共有した。例えば、司法審査に関して、イギリスやオーストラリアなどにおいて、官僚の行動への影響に焦点を当てた「規制的アプローチ」に関心が集まり、また、そのようなアプローチに関連して、上述したパブリック・ロー・プロジェクトにより、司法審査と同時に活用される裁判外紛争処理に関する実態調査が行われ、今後判決の影響力に関する実態調査が行われようとしていることを確認した。また、審判所に関しては、手続の司法化が進み、裁判所と同様に審判所における法律扶助が議論になり、裁判所事務組織と審判所事務組織が統合され、審判所や行政的正義を監視するための審議会を廃止する法案が可決され、その後の監視のあり方に関心が向けられている状況を議論した。さらに、苦情処理にかかわって、法改革委員会が行政的正義の改革をテーマにして、特にオンブズマン制度の改革を提案していることから、それ以前のオンブズマン改革やわが国の自治体におけるオンブズマンと比較しつつ、現在のイギリスにおける改革の力点を合析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、本科研に先行する科研の業績をまとめ、榊原秀訓編『行政サービス提供主体の多様化と行政法-イギリスモデルの構造と展開』(2012年、日本評論社)として出版したが、執筆者の多くは、本科研の代表者・分担者であり、出版準備に一定の時間を費やしたため、本科研の研究としての研究発表が予定よりもやや遅れることになった。出版にかかわる一時的な遅れであり、調査などは計画通り行っているので、研究発表がやや遅れた分は来年度に取り戻すことができると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、まず、過去二年と同様に、学会の際や独自に国内で数回の研究会を行う。代表者や分担者の報告だけではなく、国内外の研究者に報告を依頼し、専門的な情報を得る。既に4月には、イギリス憲法研究会と合同でイギリスから研究者を招きセミナーを開催予定であり、また、それとは別に日本の研究者2名に報告を依頼している。 さらに、分担者の6名がイギリス調査に行き、それぞれヒアリングや情報収集等を行う。研究期間の最終年度であることから、先の科研のときと同様に、年度末までに各自が分担したテーマに関して原稿を執筆して、簡易製本した一冊の冊子に成果をまとめる。その上で、2013年度にその冊子をもとに科研などの出版助成に申請し、2014年度に研究の成果を出版する予定である。
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Research Products
(16 results)