2010 Fiscal Year Annual Research Report
繁栄と自立のディレンマ-ポスト民主化台湾の国際政治経済学-
Project/Area Number |
22330052
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松田 康博 東京大学, 東洋文化研究所, 准教授 (50511482)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 明彦 東京大学, 大学院・情報学環, 教授 (30163497)
高原 明生 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 教授 (80240993)
若林 正丈 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (60114716)
小笠原 欣幸 東京外国語大学, 本部付, 准教授 (20233398)
松本 充豊 天理大学, 国際学部, 准教授 (00335415)
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Keywords | 台湾 / 中国 / 中台関係 / 経済安全保障 / 相互依存 |
Research Abstract |
初年度の主な活動として、資料収集を進めるとともに、2010年8月に台湾に出張して馬英九総統ほか15のインタビューを行い、8月に張冠華・中国社会科学院台湾研究所副所長を招聘して「両岸経済協力枠組み協定(ECFA)から見た大陸の両岸経済発展政策」をテーマとした講演会・研究会を実施し、10月には、伊藤信悟・みずほ総合研究所調査本部アジア調査部上席主任研究員を招いて「ECFAの日本への影響」と題した講演会を行い、翌年1月に「五都選挙の分析と今後の台湾政治」と題した研究会を行い、メンバーの小笠原欣幸が報告者を、松田康博・松本充豊がコメンテーターを務めた。そして、これらの活動に関する記録を197頁からなるワーキングペーパーにまとめた。 ECFAの締結は、台湾の馬英九政権による対中国大陸宥和政策が新たな段階を迎えたことを意味する。一連の調査活動により、以下の諸点が浮かび上がってきた。(1)中国はECFAをテコにして台湾の経済的・政治的抱き込みを図ろうとしているが、台湾住民の民意には明確なプラスの政治的効果が見られない。(2)馬英九政権は、「ECFA効果」により経済成長が確保され、馬再選への道筋が着くことを期待しているが、一連の選挙では苦戦続きであり必ずしも決定的な政治的効果は見られない。(3)野党の民主進歩党は、馬政権が中国に接近しすぎであり、ECFAが台湾の利益にならないことを強調していたものの、その具体的内容が台湾に有利であることが明らかになり、大陸との経済関係深化への反対路線が政権奪回の足かせとなりつつある。 このように中台経済関係が深化する趨勢にあることは明らかであるが、そのことは必ずしも中台の政治的統合に資する効果を生んでいない。他方で中国は急速な軍拡を進めている。このように、中台間の経済的な結びつきの政治的効果は、直線的な台湾独立路線がより困難になった以外、いまだ明確に説明できる状態になく、2年目には理論的な考察が必要とされる。
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