2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22330062
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
大垣 昌夫 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (90566879)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
櫻川 昌哉 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (90244574)
大竹 文雄 大阪大学, 社会経済研究所, 教授 (50176913)
亀坂 安紀子 青山学院大学, 経営学部, 教授 (70276666)
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Keywords | 行動経済学 / 利他主義 / 世界観 / 文化 / fMRI / バブル / 国際研究者交流 / ドイツ:韓国 |
Research Abstract |
研究代表者(大垣)と研究分担者の大竹、亀坂は、連携研究者のホリオカ・チャールズ大阪大学社会経済研究所教授と研究協力者の窪田康平山形大学地域教育文化学部講師とともに文化と世界観の異世代間利他主義への影響の研究を進めた。この研究は親の時間割引率の子に対する利他的な態度への影響に関するデータ分析と、親の世界観の子に対する利他的態度への影響に関するデータ分析の研究成果を学会やセミナーで発表し、得られたコメントをもとにさらに追加分析行なった。また、大垣はこの研究で得られた世界観の信条に関して確信度の強い親は、より厳しいしつけの態度を取る傾向がある実証分析結果と整合的な誘惑理論モデルの開発をVipul Bhatt(James Madison University,assistant professor)とともに進めた。また大垣は海外の研究者とともにドイツの宗教と無関係な学生グループと韓国のキリスト教神学の大学の大学院生を対象に、アンケート実験と実験調査を実施した。ドイツでは以前に行なったキリスト教、ユダヤ教、イスラム教グループと宗教に関係のないグループのメンバーを対象としたアンケート・実験調査の結果との比較が可能となった。韓国では、世界観と経済行動のアンケート調査を前年に行なったが、実験調査を初めて実施し、他国での実験結果との比較が可能となった。大垣と亀坂は世界観と利他的行動に関するアンケート調査とファンクショナルMRI(fMRI)実験を同時に用いた研究を川畑秀明慶應義塾大学文学部教授らとの共同研究として実施し、データ分析を開始した。この研究ではキリスト教信者と特定の宗教を持たない一般的な日本人に世界観についてのアンケート調査を実施し、国内と海外のさまざまな慈善事業に対する寄付の意思決定を行なっているときの脳活動を記録した。これらの新しいデータと実証分析結果は利他的経済行動の背後にある世界観まで考慮した経済動学モデルを発展させていくための基礎となる。研究分担者の櫻川はバブル期の消費・貯蓄行動の理論モデルの開発を進め、バブルを金利の引き上げで抑制すべきかどうかを議論する基本モデルを提示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国内外の研究者と宗教グループの協力を得て、文化の利他的経済行動への影響を各文化の背後にある世界観(価値観、倫理観などの判断やスピリチュアルな世界などに関する認識的な信条など)のアンケート調査と、利他的行動に関する実験調査を順調に進めてきた。世界観の経済行動に与える影響を誘惑理論を用いてモデル化し、バブル期の消費・貯蓄行動の理論モデルの開発を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
世界観の利他的経済行動への影響について膨大なアンケート調査と実験調査によるデータを得たので、分析を進めていくとともに、実証分析に基礎をおいた理論モデルの開発を進め、モデルを用いてマクロ政策の評価を進めていく。バブルについては、これまでの研究をもとに、バブルの国際的連関に焦点を当てて発展を図りたい。まず、日本の量的緩和がアメリカのバブルの生成にどのようにかかわったかを理論、実証の両面から検証したい。次に、なぜバブルが21世紀の初頭という時期に、金融技術が最もすぐれているとされるアメリカを中心に起きたのかを理解する枠組みを提示したい。中国などの金融発展は弱いが、高成長で経常収支が黒字の新興圏の存在がカギとなると予想する。
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