2010 Fiscal Year Annual Research Report
金融危機の波及メカニズムと金融機関の資産選択行動:日米欧の比較実証分析
Project/Area Number |
22330068
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小川 一夫 大阪大学, 社会経済研究所, 教授 (90160746)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
得津 一郎 神戸大学, 大学院・経営学研究科, 教授 (80140119)
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Keywords | サブプライムローン / グローバル金融危機 / 貸出行動 / 不良債権 / バンクスコープ / コールレポート |
Research Abstract |
本研究の目的は、2000年代のアメリカにおける住宅バブルめ崩壊を契機に発生したサプライムローンの不良債権化が世界的に波及したプロセスを金融機関の資産選択行動を視点にして実証的に解明することにある。今年度は全世界における金融機関の財務データを提供している包括的なデータベースBankScopeとアメリカの金融機関の財務データを四半期ベースで提供しているCall Reportを用いてアメリカの金融機関の資産選択行動について実証研究を行った。 今時のグローバルな金融危機においてアメリカ国内の不良債権問題を世界的に伝播させた大きな要因として「証券化行動」が指摘されてきたので、銀行の資産選択行動と証券化の関連に留意した分析を行った。実証分析は3つのパートから構成される。第1に、どのような銀行が証券化行動を行ったのか、第2に、証券化は銀行の貸出行動にどのような影響を及ぼしたのか、最後に証券化が銀行の財務状況に与えた影響である。 その結果、貸出債権の証券化は、もっぱら大銀行によって信用リスクを移転する目的で行われ、証券化によって貸出が加速されるという貸出のスパイラルが観察された。しかし、証券化に積極的である銀行ほどバランスシートは毀損するという結果を得た。この方向における実証分析はアメリカの研究者を含めて本研究が最初である。 また、同時並行的に金融機関におけるショックが実物経済に与える効果を調べるために、EUとアジアにおける企業の財務諸表のデータベース(アマデウス)を購入し、地域ごとに個別企業のデータを整備した。このデータベースを用いて次年度ではEU諸国、日本を含むアジア諸国の企業に対する金融ショックの影響を実証的に分析する。
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Research Products
(1 results)