2010 Fiscal Year Annual Research Report
実験経済学と人工市場・模擬実験市場を用いたGARCH効果の発生メカニズムの解明
Project/Area Number |
22330097
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
須齋 正幸 長崎大学, 経済学部, 教授 (40206454)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
晝間 文彦 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (00063793)
鳥海 不二夫 名古屋大学, 情報科学研究科, 助教 (30377775)
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Keywords | 高頻度データ / GARCH / ACDモデル |
Research Abstract |
本年度は、外国為替市場の市場構造に関する基礎研究を行った。本研究では、市場構造として個別ディーラー間の情報格差に注目している。情報優位にあるディーラー群と情報劣位にあるディーラー群があるとの仮説の現実妥当性を、高頻度の為替レートデータを用いて実証的に検証した。そこではディーラーが情報に基づいて取引を行っているのかにつき、市場の効率性を検証することから始めた。厳密な意味では市場の効率性は棄却された。これはこれまでの実証研究の成果と整合的である。つぎに、O'Hara他のモデルとDiamond他のモデルを用いて、ディーラーの取引と情報の関係をテストした。2008年と2009年の7月から9月のデータを用いて、リーマンショックという情報を2008年のデータをベンチマークとして明示的に比較できるようデータセットを構築し、実証分析を行った。その結果、いずれのデータにおいても外国為替市場はO'Haraが想定したように、資産価格へのあらゆる情報(ポジティブあるいはネガティブ)に対してディーラーは反応して取引を行っている可能性が示唆された。以上の結果から、外国為替市場におけるディーラーは、市場にもたらされる情報に反応して取引を行うが、その情報が即座に資産価格に反映されるのではなく、過去の取引自体が将来の取引に影響を与える可能性がある。この傾向は、情報格差があるディーラーが存在する場合に、情報優位にあるディーラーの行動に情報劣位にあるディーラーが追随するとの市場構造の仮説をサポートするものと考えられよう。
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