2011 Fiscal Year Annual Research Report
動学的最適化理論を応用した金融リスク管理・監督手法の開発
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22330098
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
細野 薫 学習院大学, 経済学部, 非常勤講師 (80282945)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江上 雅彦 京都大学, 大学院・経済学研究科, 准教授 (40467395)
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Keywords | 金融破綻 / 東日本大震災 / 二重債務問題 / 金融契約理論 / 証券化 / イベントスタディー / ソルベンシーリスク / 社会的厚生 |
Research Abstract |
銀行破綻の社会的コストを考慮した最適介入問題を、東日本大震災における企業の二重債務問題に適用し、「経済学的視点から見た二重債務問題-企業の問題を中心に」(内田浩史、植杉威一郎、小野有人、宮川大介氏との共著)をとりまとめた。本論文は、金融契約の理論に基づき、東日本大震災の被災地企業の財務データを阪神・淡路大震災や中越地震の被災地企業と比較しながら二重債務問題に関する定量的な分析を行い、さらに政府・中央銀行による対策についての評価も行ったものであり、査読付き学術雑誌『金融経済研究』への掲載が決定した(細野)。 また、これに関連する問題として、震災が金融システムを不安定にし、設備投資などの企業行動に影響を及ぼすことが考えられる。この点に関して、阪神・淡路大震災のケースを取り上げ、「大震災と企業行動のダイナミクス」(植杉威一郎、内田浩史、内野泰助、小野有人、間真実、宮川大介氏との共著)を取りまとめた。すでに学術雑誌に投稿し、現在、レフリー・コメントに沿った改訂作業中である(細野)。 最適資産証券化プログラムに関しては、厳密なイベントスタディーが可能となるよう、銀行合併の時系列データを整備し、これを銀行財務・株式データを統合する作業を進めた。また金融機関のソルベンシーリスクを一定に保つために必要な監督当局の介入のタイミングに関する、社会的厚生を考慮したモデルに関する研究を進めている(細野、江上)。 信用リスク管理に関してであるが、急激に銀行の貸出資産ポートフォリオの価値が下落する局面で、規定の自己資本比率を保持しつつ、いかに逸失利益を最小にするかというトレードオフ問題を解法する論文"Precautionary Measures for Credit Risk Management in Jump Models"の査読付学術誌『Stochastics』への掲載が決定した。(江上)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、情報の非対称性や契約の不完備性に基づく金融理論と、リアルオプションなどの動学的最適化理論を結び付けることにより、金融危機の防止に役立つ銀行のリスク管理手法や政府の監督手法の改善に関する提言を行うことを目的としている。交付申請後、東日本大震災が発生し、予期せぬ形であったが、震災で生じた金融上の問題に本研究を応用することなどが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
資産証券化については、理論モデルにレバレッジ規制をより適切に取り組みための改良に努めるとともに、そこで得られた実証的含意を、23年度に構築した証券化のデータベースにイベントスタディーの手法を適用して、検証する。 銀行監督については、金融機関のソルベンシーリスクを一定に保つために必要な監督当局の介入のタイミングに関し、社会的厚生を考慮した基本的なモデルを構築したが、早期是正措置の適用事例等を踏まえ、さらに現実的なモデルとするために改良を加える。
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Research Products
(2 results)