2011 Fiscal Year Annual Research Report
公的部門への発生主義会計適用による効果に関する総合的研究
Project/Area Number |
22330136
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山本 清 東京大学, 大学院・教育学研究科, 教授 (60240090)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 麻理 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (50248978)
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Keywords | 発生主義 / 現金主義 / 有用性 / アカウンタビリテイ / 自治体 / 会計 / 公的部門 / 効果 |
Research Abstract |
本研究では発生主義会計の導入状況や活用状況が異なる自治体の実態を分析することを通じて、いかなる条件がそろえば本来の効果が生じるのか、あるいは、どのような条件やメカニズムの下で負の効果が生じるかにつき国際比較を交えて明らかにすることを目指している。 前年に実施した我が国の自治体の議長及び財政部局へのアンケート調査を詳細に分析した結果、発生主義会計の導入や適用には自治体の内生的なものというより国の指導や影響が極めて大きいこと、また、議員側では発生主義会計澹報の利用に熱意はあるものの従来の伝統的現金主義会計の方が依然として有用性が高い傾向にあった。 特に注目される点は、予算会計制度が現金主義で運営されている状況下では積極的な発生主義情報の活用誘因が少なく、資産管理への革新的手法やインフラ資産の維持更新への活用等がない限り説明責任の充実に終わりがちになることが自治体へのインタビューを通じて判明した。 国際比較でもオランダ、英国等の比較的先進的なところとされる国でも管理会計的な応用に留まっていて、その適用も既往の予算会計との緩やかな結合(loose coupling)と形容できる状態である。想定された負の効果については、発生主義の財務書類を作成する費用と精度が多く指摘されており、一部の自治体は企業会計的な財務書類を作成していても公表せず、説明責任の向上にも結び付いていない。発生主義情報の費用対効果について大きな幅があるといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
24年度に予定しているイタリアの実態調査につき、ボローニャ大学のパドヴァニ准教授と2011年度の学会等で交渉して我が国と比較可能な形式でアンケート調査を実施することで合意し現在準備中である。このように国際比較の貴重なデータが得られそうであり、計画以上に進展していると考えられる。また、フランス国立研究所のBiondi教授とも企業会計と政府・非営利会計の関係について20012年2月の来日時に研究セミナーを開催した。
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Strategy for Future Research Activity |
2012年度以降の研究については、発生主義適用後の時間的効果を検証するため二度目の我が国自治体に対するアンケート調査を実施するとともに、公的部門内部での意思決定と情報内容との関係につき現地調査等を行う。また、国際比較調査を進めるとともに、研究成果を国際会議・国際学術誌等を通じて積極的に国際的に発信することとする。
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Research Products
(6 results)