2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22330181
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
唐沢 かおり 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (50249348)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹村 和久 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (10212028)
藤井 聡 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80252469)
戸田山 和久 名古屋大学, 情報科学研究科, 教授 (90217513)
|
Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 責任帰属 / 集団心 / 謝罪 |
Research Abstract |
1)集団による謝罪の効果について、個人の影響力認知が及ぼす影響を検討した。従来の個人レベルに焦点を当てた研究では、許すかどうかが、相手の行動や資源などにたいするコントロール感認知に影響されることが知られている。本研究は、この知見を集団場面に適用し、集団の謝罪が妥当であると見なされる場合に、個人の影響力が高く認知されているほど、集団への許しが喚起されることを実験的に明らかにした。また、影響力を有する個人は、謝罪にともなう寛容性を強めるのみではなく、謝罪の提示がない場合は、逆に非寛容的な反応を強化していた。このような結果は、影響力という要因が、人を単に許しに動機づけるのではなく、態度を極化させる性質を持っていることを示唆している。 2)集団心と責任帰属の関係に関する理論的考察を行い、集団心を議論するための要件について検討を行った。心の機能は個人単位で概念化されてきたが、本論考では、集団に心的な概念を導入して分析するために、機能主義・道具主義的スタンスが有効かどうかを議論した。その結果、主観的経験・フォークサイコロジーに基づき心的機能を概念化する方略が「集団心」には通用しない以上、素朴に汎用性のある概念を同定するのは困難であること、したがって各研究が、現象の理解に有効な概念として機能するものを、(当面は)個別に措定する必要があることが示唆された。ただし、それは、恣意的な機能の措定による概念の乱立につながる。その問題を回避可能な条件は、実在論的な裏付けの存在であり、具体的には、集団としての「行為」が存在し、かつそれが物理的に実現可能なシステムを集団内に保持していることが要件となる。だとするなら、集団の中でも「日本人」のような単なるカテゴリーではなく、目的をもって機能する組織については心的概念と結びついた責任概念を措定する可能性が開かれることになるという結論を得た。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画通りに研究は進められている。学会発表や論文の執筆も、順次遂行しており、他領域の研究者を交えてのコラボレーションも成果を収めつつある。
|
Strategy for Future Research Activity |
当該課題を進めるうえで、当初予測していなかった知見や議論が得られているので、まずはその対応を進め、仮説の修正、実証へとつなげていく。また、当初の計画にある責任概念分析をさらに進め、その成果を論文化することを計画する。そのうえで、これまで得た知見をまとめたうえでシンポジウムやワークショップの場で発表し、批判的な検討を求め、得られたフィードバックをもとに、本研究計画をさらに発展させるための方向性を考察する。
|
Research Products
(11 results)