2011 Fiscal Year Annual Research Report
非行臨床における発達障害・精神障害に関わるリスク・マネージメントの実証的研究
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22330192
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
生島 浩 福島大学, 人間発達文化学類, 教授 (80333996)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡本 吉生 日本女子大学, 家政学部, 教授 (20315716)
廣井 亮一 立命館大学, 文学部, 教授 (60324985)
後藤 弘子 千葉大学, 大学院・専門法務研究科, 教授 (70234995)
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Keywords | 社会系心理学 / 発達障害 / 精神障害 / リスク・マネージメント / 非行臨床 / 多機能連携 / 家族療法 / 司法臨床 |
Research Abstract |
平成23年度は,欧米で非行臨床において効果が実証されている,多機関連携型の家族介入をベースとした「マルチシステミックセラピー(MST)」や合同家族面接を多用する機能的家族療法(FFT)を大学附属の臨床心理・教育相談室やスクールカウンセラーとして学校臨床現場で継続的に実施した。平成24年3月には,米国・ニューヨーク市の非行臨床機関において,研究分担者の岡本吉生と共に,家族療法プログラムの運用状況について実地調査した。これらの研究成果は,平成23年8月に神戸で開催された「国際犯罪学会第16回世界大会」において,研究グループ全員が参画したセッションを設けたほか,多機関連携による社会内処遇をテーマにしたシンポジウムを企画した。さらに,同年9月にドイツ・ベルリンで開催された「国際思春期青年期精神医学・心理学会第8回大会」において,家族支援をテーマに報告を行った。 研究分担者の岡本吉生は,科学的根拠に基づく治療プログラムとして,欧米諸国で急速な勢いで様々な治療施設に導入されているFFTの日本への導入の契機となるよう,同プログラムのテキストの翻訳に研究代表者,家庭裁判所調査官,法務省保護観察官らと着手した。廣井亮一は,家庭裁判所での実践を踏まえて,今まで積み重ねてきた「司法臨床」の方法-法と心理臨床の協働-をさらに広く展開させるべく,弁護士と臨床心理士の協働に焦点を当てた実践研究を深めた。後藤弘子は,昨年度に調査したアメリカにおけるMST,FFTをどのように非行少年の処遇に応用しているのかについて,シアトルにおいて再び調査を行った。これらの研究成果を踏まえて,家庭裁判所関係者に向けて,MST,FFTの運用状況について論考を執筆し,日本への適応可能性を制度面から検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本でのリスク・マネージメントに関する実態調査を踏まえて,アメリカにおける処遇プログラムの運用について実地調査を実施した。研究グループ各員は,それぞれの専門領域でシステミックな観点をもった,多機能連携によるアプローチを追求しており,実証研究は順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
非行臨床,教育臨床等において有用である機能的家族療法のテキストを翻訳,刊行準備中である。最終年度にあたるため,研究成果は,グループ全員が参画して平成24年6月に山口県で開催される「家族研究・家族療法学会第29回大会」においてシンポジウムを設けるほか,同年10月に東京・一橋大学で開催される「日本犯罪社会学会第39回大会」において,非行・犯罪リスクへのマネージメントについて総括的な報告を行う。研究代表者が,東日本大震災の被災地における生活支援者であり,放射能不安を抱える福島で家族臨床の観点からケース・マネージメント活動にあたっており,リスク・ファミリーへの支援についても前記学会などで報告する予定である。さらに,同年4月には,非行少年・犯罪者の立ち直りとリスク・マネージメントに特化したわが国で始めての「日本更生保護学会」の設立を主導し,副会長に就任した。設立大会は,同年12月に東京・立教大学において開催予定であり,学会誌創刊号において,更生保護の意義と課題について論考を掲載する。
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Research Products
(5 results)