2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22330231
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小方 直幸 東京大学, 大学院・教育学研究科, 准教授 (20314776)
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Keywords | 大学教育 / 大学教員 |
Research Abstract |
本研究は、マクロ(政策)とミクロ(個人)を結節させるメゾレベルである大学・学部の組織的な大学教育のガバナンスの体系的な考察を、事例研究を通して行い、同時に明らかにする個々の教員の個人レベルの教育実践の実態を、教育のガバナンスとの関連において位置づけ直すことを目的としている。 今年度は、昨年度実施した実証研究に向けた予備的研究の結果を踏まえて、メゾレベルとミクロレベルの繋がりを考えるために大学教員の授業観と教育行動に関する調査を行った。具体的には全国の社会科学系、工学系を持つ学部に所属する講師以上の教員に対して、学科の組織とプログラム編成権、担当授業と教育をめぐる学生・教員間の交流状況、そして教員の考えている授業観を尋ねた。回収率は31%だった。調査の分析から、プログラムの編成権については、授業内容・方法の面では個々の教員に任されていること、授業担当についてはゼミや研究室をベースとした少人数授業の担当が少なくないこと、教室での授業よりもゼミや研究室ベースの授業を重視しており、授業の効果という点でも教員としての成長という点でも、ゼミや研究室がベースとなっており、体系的なプログラムの構築や成績評価の標準化は望んでいないことが明らかとなった。このように教育活動に対しては組織よりも個々の教員をベースとし、授業では教室での教育よりも研究室の教育を重視する構造の下で、組織的な教育のガバナンスを確立することは難しく、次年度の事例研究の選定やアプローチ方法を勘案する上で重要な示唆が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
GP等で先進的な教育の取り組み事例も紹介されるようになっているが、局所的な取り組みが中心で学科や学部を単位とした組織的な大学教育を実践している例は多くない。また組織的な実践例も組織的な取り組みをせざるを得ない共通・教養教育段階のものが多く、専門教育における教育のガバナンス研究は立ち後れている。なぜ立ち後れているかも含めてまずは明らかにすべき、個々の教員の授業観や教育行動を検証した研究は少なく、その実証研究に着手できたことの意義は少なくない。事例研究を行う際の解釈にも寄与する研究成果が得られたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
教育改革の事例報告は少なくないが、組織的な教育実践で成功している事例報告やその研究は、事例数が少ないこともあって進展していない。今年度行った教員調査の結果を踏まえながら、学科や学部レベルで組織的な教育実践を行っている取り組みに着目し、その背景、改革のプロセスと結果について丹念な実証研究を行う予定でいる。教育活動については「成功例」と位置づける定義そのものも自明でないこともあり、その点も含めた検証を行いたい。
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Research Products
(2 results)